長時間のパソコン作業で目や腰など心身の不調を訴える人も

企業が従業員の健康を気遣い、手厚い福利厚生を設けたり、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたりする事例が相次いでいることを知っているだろうか。少子・高齢化を背景とした人手不足が深刻となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大などが背景にある。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げている。企業は「自社のブランディングの一環」としても従業員の健康サポートを充実し、目標を達成しようとしている。本連載では、全国で法人向けの出張マッサージサービスを手掛ける株式会社イーヤスの遠藤基平社長が、その経験をもとに「健康SDGs」を実践する企業を紹介し、その意義を具体的に解説する。

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在宅勤務時では、パソコン作業も長時間になる傾向

在宅勤務では身体の活動量が落ちることが懸念されてきました。歩数の減少や運動機会の減少などにより身体活動が低下し、体重増加など健康に悪影響を与えるとも言われています。仕事上でも、パソコンやタブレット、スマートフォンなどデジタルデバイスをより長い時間使用する傾向がみられ、肩凝りや腰痛、目の疲れなどを増加させてしまいます。

 

情報通信業のA社(東京都渋谷区 社員230名)では、現在も全社員が原則としてリモートワークをしています。同社は、長引く在宅勤務を受けて、社員から肩凝りや腰痛などの身体的不調の報告が増えてきたことを懸念していました。

 

社内アンケートを取ったところ、「在宅勤務時では、パソコン作業も長時間になる傾向」がわかりました。このため同社では「メール送付の抑制や社内システムへのアクセス制限」「オンラインで勤怠管理システムへ連動させる」ことなどで、時間外や休日勤務の禁止を進めてきました。

 

2022年からは、これらの社内ルールに加えて、長時間のパソコンなどの作業による健康への影響などを毎月情報発信し、社員の健康への意識やリテラシーを高めるようにしました。さらに、仕事の合間や休憩中に椅子に座ってできるストレッチと会社でオリジナル体操の動画を作成し、社員が自由に閲覧できるようにしました。

 

社員が安心・信頼して閲覧できるものを会社が提供することで、社員の6割程度が動画を定期的に閲覧し実践しているという結果がでているそうです。

 

リモート勤務社員へのメンタルヘルス対策を推進

ゲーム制作会社のM社(東京都品川区、社員100名)では、働き方の自由度を高くして、
社員の健康維持増進やメンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいます。コロナ禍の影響で導入したリモート勤務でストレス度が下がった社員もいれば、ストレス度が高まった社員もいます。コロナ禍前からもメンタル不調を訴える社員は年々増加傾向でした。

 

このため同社では社内で対策を検討し、2020年から外部の健康管理システムを導入しました。

 

現在では導入した健康管理システムに装備されている「オンライン保健室」サービスに対応を任せ、WEB産業医面談や保健師とのチャット相談などのICTツールを活用しています。休職に至る前の体調不良の状態での生産性低下も課題にしていましたが、システム導入後、増加傾向だった休職者も減少傾向にあり、売上も120%増で推移しているそうです。

 

リモートワークが推進されたことで、会社での人間関係のストレスが緩和された一方、社員間のコミュニケーションの減少や社員の身体的不調が助長されたという声も聞こえてきます。アフターコロナを見据えた社員の健康対策が、企業の持続的発展に繋がると考えます。

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