(※写真はイメージです/Pixabay)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

SENSEX指数が最高値更新

■インドの株式市場が堅調な展開となっています。代表的な株価指数のSENSEX指数(大型株)は21日、終値ベースで過去最高値を更新しました。また、中型株の値動きを示すNIFTY中型株指数も8連騰し、連日で過去最高値を更新しています。

 

[図表1]インド大型株と中型株の動き

 

■米国景気が予想以上に底堅く、景気後退を伴わないソフトランディングに向かうとの見方を背景に、投資家のリスク選好姿勢が高まり、グローバルに株式市場が上昇しています。

 

■こうしたなか、投資マネーが、新興国のなかでもファンダメンタルズが良好で、成長期待の高いインド株に流入しています。外国人投資家は3月以降足元まで4ヵ月連続でインド株を大きく買い越しています(6月は20日時点)。3月以降の買い越し額は合計で112億ドル(約1兆5,900億円)に達しており、2020年以来の規模となっています。

 

[図表2]外国人投資家の売買動向

企業業績は堅調、利上げ打ち止め観測もプラス

■インド株が最高値を更新した背景には、堅調な企業業績があります。米ブルームバーグによれば、SENSEX指数の予想ベースの1株当たり利益(EPS)の伸び率(前年比)は、2023年+21%、2024年+17%、NIFTY中型株指数については2023年+25%、2024年+24%と、高い利益成長が見込まれています。

 

■また、インドの消費者物価上昇率がピークアウトし、物価目標レンジに収まっていることで、インド準備銀行による利上げが終了したとの見方が広がったことも、株式市場への安心感につながっているとみられます。

今後の展開:チャイナプラスワンが追い風、バリュエーションに割高感なしとみる

■外国人投資家がインド株を大きく買い越している背景に、米中対立が深刻化している影響で、インドへの直接投資が拡大するとの期待が高まっていることも挙げられます。

 

[図表3]拡大が期待されるインドへの直接投資

 

■海外企業は、地政学リスクを警戒して、中国への一極集中から分散投資に舵を切り始めました。中国に加えて別の国にも生産拠点を確保する「チャイナプラスワン」として、インドが選ばれています。インド政府が導入した製造業振興のための生産連動型優遇策(PLI)という補助金制度も海外からの直接投資を後押ししています。

 

■米アップル社は、インドへの大規模投資を表明し、関連する部品メーカーがインドへと進出しました。すでにインドでiPhoneの生産を始めており、中国からインドへの生産移管が進んでいます。また、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEOは20日、訪米中のインドのモディ首相との会談後、「インド進出を確信している」と述べました。このようにインドへの直接投資は一段と拡大することが見込まれ、長期的なインドの経済成長率を押し上げそうです。

 

■インド株は過去最高値にあるものの、予想ベースの株価収益率(PER)による株価評価(バリュエーション)でみると、割高感はありません。足元のSENSEX指数の予想PERは19倍と、21~22年に比較すると低下しており、バリュエーションは改善しています。

 

[図表4]SENSEX指数の予想PERと予想EPS

 

■今後も世界最大の人口を抱えるインドの高い成長期待やチャイナプラスワンの動きを背景に、投資マネーが継続的にインド株式市場に向かうことが期待されます。

 

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド株が「過去最高値」更新、外国人投資家は4ヵ月連続買い越しへ。今後も「一段と投資拡大」が期待されるワケ【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

 

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