役員社宅の「3つ」のメリット
――では、役員社宅のメリットを教えてもらえますか?
黒「役員社宅のメリットは、主に下記の3点です。
2.社長(役員)の手取りが増える
3.社会保険料の負担が減る
以下で詳しくみていきましょう」
1.会社負担分が全額損金扱いになる
黒「会社が大家さんに支払う家賃と、役員から徴収する家賃相当額の差額、つまり会社の負担分をすべて会社の損金とすることができます。
――家賃のうち、どれくらい経費にできるのでしょうか?
黒「詳しい計算方法はのちにお伝えしますが、もともとの家賃の少なくとも50%は損金にできるとお考えください」
――50%ということは、家賃が30万円だったとすると、15万円は損金算入できるということですね。年間にすると、180万円が会社の経費にできますね。
黒「はい。家賃は毎月発生するものですから、積み重なるとこの効果はかなりのものになります」
――企業がいわゆる「住宅手当」を支給しているような場合もあると思いますが、役員社宅とどちらがお得なんでしょうか。
黒「『住宅手当』と『役員社宅』は皆さん混同しやすいですが、住宅手当は所得(=給料と同じ)とみなされ、所得税の課税対象となります。ですから、住宅手当が支給されると給料が上がった、ということになるため、結果として所得税や住民税、社会保険料負担も増えてしまうということになります」
――なるほど。それは絶対、役員社宅のほうがお得ですね!
2.社長(役員)の手取りが増える
――では、「社長(役員)の手取りが増える」、というのはどうしてですか。
黒「役員社宅制度を導入することで、役員個人で税負担などを減らし、実質的な手取りを増やすことが可能です。
[図表]の左側を見てください。たとえば、役員報酬として月額100万円を貰っている役員がいるとします。役員社宅は導入しておらず、家賃月30万円を自分で払っています。したがって、個人として自由に使えるお金は、100万円から家賃30万円、さらに報酬に係る所得税・住民税・社会保険料を引いた残りの額(青い部分)です。
では、役員社宅制度を導入した場合、どうなるでしょうか。
家賃の半分、15万円を会社が負担するものとした場合、役員が負担する家賃相当額15万円は、報酬から天引きされます。このとき、会社が負担している家賃分を含めた、役員への実質的な報酬額は月100万円で変わっていません。
しかし、会社が負担する家賃分15万円を、役員報酬月額100万円から差し引くことで、役員報酬を月額85万円に減らすことができます。役員報酬を減額したことにより、役員個人にかかってくる税金の負担は減ります。
結果として、自由に使えるお金は増えることになるのです」
――なるほど! 一見、報酬が15万円減って損をしたように感じますが、実際は自由に使えるお金が増えているんですね。
3.社会保険料の負担が減る
――では役員社宅制度のメリット3つ目、「社会保険料の負担が減る」というのはどうしてですか。
黒「日本において、社会保険料は『標準月額報酬』から算出されます。給与や報酬を低く抑えると、社会保険料も安くなる仕組みです。先述したように、会社負担の家賃分を役員報酬から引き下げることができるので、社会保険料額も下がります。
社会保険料は会社と折半ですから、社会保険料の負担が減るというのは会社・役員双方にとってメリットとなります」
――なるほど。この負担はかなり重いので、経営者にとってすごくありがたいですね。
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黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
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