1年近く売れ残った土地が「投げ売り」されやすい理由
前回述べたように土地の情報は、まず一般の人には回ってきません。しかし、一般に情報公開された物件の中にも、掘り出し物はあります。もちろんこれを手に入れるのは容易ではありませんが、しかしこれは狙い目です。
筆者の場合は、まず「相場よりも割高なアパート向き、しかも売主が業者の土地」をレインズなどで見つけます。このような土地は割高ゆえになかなか売れません。3か月、半年とじっとウォッチし続けます。すると1年近く経ったときに、突然大幅値引きをすることがあるのです。
理由は借りたお金を返さなければならないからです。業者の中には、土地を買い取る資金を銀行からのPJ(プロジェクト)資金で賄うケースが多々あります。その返済期限の多くが1年なのです。そのため販売開始から1年近く売れ残った物件は、投げ売りをされる可能性が高いのです。また、この投げ売りを待つことなく、1年近く経った物件に対し、「この価格なら買う」と指値を入れる方法も大変有効です。
ただしこうした物件を手に入れるには、非常に時間がかかります。ですから筆者は、このような物件の情報を時期をずらして常に百件以上ストックして、欲しい時に良い物件がすぐに手に入るようにしています。
土地の現金化は「建売住宅」にするのが最速
ここまで解説してきたように、誰もが欲しがるような土地の情報を素人が手に入れるのは非常に困難です。そのためより多くの情報を得るには、広いネットワークを持った不動産業者を見つけることが必要です。ところが、土地情報の集まる不動産業者=アパート経営に向いた土地情報を持っている、とは限りません。
そもそも「駅前」で「閑静な住宅地」といった誰でも欲しがる土地は高額です。相場通りの価格で買ってしまえば、アパート経営で利益を出すことができません。アパート経営の勝ち組になるには、入居者募集に苦労しない人気の土地なのに利益が出る、つまり土地情報の集まる不動産業者の中でも、特にアパートに向いた掘り出し物の土地情報を持つ業者をパートナーにすることが必須なのです。
では、アパートに向いた掘り出し物の土地とは、どのような土地でしょうか。前述のように一般的な住宅地が売りに出される場合、その情報の多くは限られた不動産会社間で留まることになります。ここでその土地が「駅前」で「閑静な住宅地」といった条件の整った物件だった場合、多くは建売専門会社へ転売、またはその不動産会社自身が建売住宅を建築して販売することになります。
そのわけは最速で現金化できるから。仮に注文住宅用(アパート用も含む)として更地で売りに出してしまうと、そもそも注文住宅を建てる人はお金持ちなので、母数が少なくなかなか売れません。さらにそのような人は、間取りの計画などをしてから契約をしたがり、現金化するまでに時間がかかります。
一方で建売住宅を求めている人は、注文住宅を希望する人よりはるかに多く、人気のエリアであれば、完成前に売れてしまうのが当たり前になっています。特に2000年代に入って地価が落ち着いてからは、人気エリアの建売住宅が飛ぶように売れています。バブル期の30代、40代は地価高騰で遠距離通勤を強いられました。しかし、2000年代以降の30代、40代、つまりはじめて家を買う層(一次取得者層)は、かつて高嶺の花だった好立地に家が持てるようになり、現在まで都心回帰傾向が続いています。とはいえ、好立地に加えて注文住宅までは予算的に無理。とても買えません。そこで近頃は、バブル期に1億円以上したような高級住宅地に、建売住宅が目立つようになってきたのです。
建売専門会社が狙う土地は、「通勤圏内」で「駅近」で「閑静な住宅地」。まさにアパートを建てるならベストな立地条件です。そんな競争率の高い物件を格安で買えれば、それこそ掘り出し物といえるでしょう。