●新指数はプライム市場を対象に資本収益性と市場評価の観点から選定された150銘柄で構成。
●資本収益性はエクイティ・スプレッド、市場評価はPBRをそれぞれ銘柄選択基準の指標として採用。
●投資家や企業の価値創造意識がいっそう強まれば新指数は日本株魅力向上の1つのきっかけに。
新指数はプライム市場を対象に資本収益性と市場評価の観点から選定された150銘柄で構成
価値創造に着目した新指数「JPXプライム150指数」の算出が、いよいよ7月3日から始まります。開発を進めてきた日本取引所グループ(JPX)傘下のJPX総研は5月26日、新指数の算出要領などの詳細を発表しました。そこで今回のレポートでは、JPXプライム150指数とはどういう指数なのか、公表資料から読み解き、株式市場にとっての意味合いを考えます。
PXプライム150指数のコンセプトは、「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」です(図表1)。具体的には、東証プライム市場に上場する時価総額上位銘柄を対象に、「資本収益性」と「市場評価」という、価値創造を測る2つの観点から選定した150の銘柄によって構成されます。指数の基準日は2023年5月26日、基準値は1,000ポイントで、算出方法は浮動株時価総額加重型となります。
資本収益性はエクイティ・スプレッド、市場評価はPBRをそれぞれ銘柄選択基準の指標として採用
前述の資本収益性については、「エクイティ・スプレッド」が選択基準の指標として採用されます(図表2)。エクイティ・スプレッドとは、株主資本利益率(ROE)と株主資本コスト(投資者の期待リターン)の差で、ROEが株主資本コストを上回ると、エクイティ・スプレッドはプラスとなり、価値が創造されたと推定されます。この資本収益性の観点からは、別途規定された手順に基づき、75銘柄が選定されます。
そして、市場評価については、株価を1株当たり純資産(BPS)で割った株価純資産倍率(PBR)が選択基準の指標として採用されます。株価が1株当たり純資産であるBPSを上回ると、PBRは1倍を超えるため、価値が創造されたと推定されます。この市場評価の観点からは、別途規定された手順に基づき、75銘柄が選定されます。銘柄入れ替えは年に1回、毎年8月に行われますが、2023年8月は実施せず、初回は2024年8月となります。
投資家や企業の価値創造意識がいっそう強まれば新指数は日本株魅力向上の1つのきっかけに
なお、JPX総研が5月26日に公表した参考資料によると、業種別分布状況(ウエイト・ベース、5月)について、JPXプライム150指数では、東証株価指数(TOPIX)と同様、電気機器が1位、情報・通信業が2位を占めています。ただ、構成銘柄のPBR1倍未満、ROE8%未満の指数に占める割合については、TOPIXがそれぞれ50%程度であるのに対し、JPXプライム150指数は、順に10%未満、20%未満となっています。
東京証券取引所が3月末に、資本コストや株価を意識した経営などを企業に要請したことを機に、国内外で日本株を見直す機運が高まっています。この流れのなか、価値創造の推定される企業で構成される指数が発表されることは、非常に良いタイミングと思われます。新指数の算出開始は、投資家や企業がエクイティ・スプレッドやPBRをより強く意識し、ひいては日本株の魅力向上につながる、1つのきっかけになるのではないかとみています。
(2023年6月22日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株ブーム「加速」の可能性も…「JPXプライム150指数」が7月3日から新たに算出開始【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト