前回は、無駄を抑えて低コストでアパートを建てるためのポイントを見てきました。今回は、投資用不動産を「利回り」だけで選んではいけない理由について説明します。

アパートを建てるとき、一番に考えるべきは「立地」

アパート経営において一番のリスクは空室です。その空室の責任は、管理会社にあると書いてきました。しかし、どんなに優れた管理会社でも、どうしようもない空室の要因があります。それは立地です。

 

人はいくら豪華な建物でも、いくら安い家賃でも、住みたくない場所のアパートには見向きもしません。アパート経営は、つまるところ立地ビジネスなのです。

 

ここからは、ローコストのアパートを建てる上で、どのような土地を選べばいいのか、また、それはどうすれば手に入るのかを解説していきます。もちろん戸建てを建てるのとは、選択基準が全く異なります。同様に鉄骨やRC造とも選ぶべき土地は変わってきます。まずはアパート経営を始める上で知っておくべき土地についての基本的な考え方から始めましょう。

 

アパートを建てるなら立地がいいところ。はじめて相談に来る人にこの話をすると、ほとんどが「立地がいいほど土地の価格が高くなるから、利回りが低くなるのでは」と言います。

 

利回りとは、1年間に土地と建物を合わせた物件価格の何%を回収できるか、の値です。この値が高ければ高いほど収益性の高い物件といえます。

 

たとえば物件価格が5000万円で、年間の家賃収入が500万円なら、

 

500÷5000=10%

 

です。

 

つまり10年で投資金額を回収できることになります。一般的にこの値が投資物件を選ぶものさしとされ、非常にこだわる人が多いようです。ひと昔前までは、この10%以上が投資する価値があるという基準でした。アベノミクスによって地価が上昇傾向に転じ、原油高で材料費が高騰している現在は、この数字の物件を手に入れることは非常に困難な状況です。都内なら7%以上、神奈川県、埼玉県、千葉県でも7.5%以上なら優秀といえるでしょう。

「新築」だからといって高い家賃を取れる時代ではない

とはいえ、そもそもこの利回りを、投資物件を選ぶものさしにしてはいけません。利回りの高い物件は、“家賃が高い”または“物件が安い”のいずれかということになります。ところがこのどちらもが安定経営の障害になり得るのです。

 

たとえば相場よりも高い家賃を得るには、築浅、できれば新築が理想とされています。以前は、建てたばかりのアパートは人気があることから「新築プレミアム」と呼ばれ、相場よりも1割ほど高い家賃設定が可能でした。しかし、それは本当に新築のときだけ。2人目以降は相場になってしまいます。これでは利回りが高いのも最初だけとなります。

 

さらにリーマンショック以降は、新築プレミアムさえもなくなってしまいました。不景気によって割高な物件の優良顧客だった法人や学生の親の財布の紐が堅くなったためです。以前は新築なら家賃が3000円以上高くても新築を選んでくれました。ところが今は「ぜいたく言うな!」と築10年、あるいはもっと古くても安い部屋を選びます。

 

現在は、新築だからといって高い家賃でも入居者が飛びついてくれる時代ではありません。そこそこきれいであれば安ければ安いほど選ばれるのです。新築の方が入居者は見つけやすいのは確かですが、利回りにこだわり過ぎて家賃を高く設定してしまうと誰も入ってくれない状況になります。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法

サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法

田脇 宗城

幻冬舎メディアコンサルティング

広がる格差、上がらない給与、将来に備えた生命保険や家のローンに子どもの教育費・・・。働けど働けど出費は増える一方なうえに、将来に対するお金の不安も拭えないという30代のサラリーマンは多いでしょう。 年収がプラス30…

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