電力会社が今年に入り、国に値上げを申請していた背景
2022年から2023年1月まで、消費者が負担する電気代は上がり続けていました。
影響が大きかったのは「エネルギー資源の価格上昇に伴う、燃料費調整額の高騰」です。もっとも電気代が上がっていた2023年1月は、その1年前と比べて平均月額で1,495円も上がっています。
そこで政府は、原油価格の高騰が国民生活や経済活動に与える影響を最小化すべく、2022年4月、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を取りまとめました。
「激変緩和措置」という扱いで、電気や都市ガスの小売り事業者に補助金を支給したのです。
この補助金が電気代の請求に反映され、大幅に上がっていた電気代は一時的に抑えられました。しかし私たちの税金が補助金となって返ってくるだけで、本質的な電気代抑制策ではありません。
消費者からすれば値上げはできるだけ避けてほしいところですが、無理に抑えればむしろデメリットもあります。
電力会社も民間企業です。コストの回収も十分にできていない状態が続けば財務体力が悪化し、借金の利率が上がってしまいます。
電気事業は多額の借金で回っていますので、借金の利率が上がるということは、ひいては電気代が上がってしまうということ。
電力会社は国営企業みたいなものだから、何が起きても経営破綻しない』と考えている人も多いように思いますが、実は全然、そんなことはありません。
低いはずの「新電力」の料金もむしろ大手より上がっている
さて、大手電力会社各社から「規制料金」の値上げ申請を受けた経済産業省は、その値上げ幅が妥当か、十分な経営努力が行われているかを判断したうえで、値上げ申請に対する可否を判断することになっています。
各社は2023年1月に申請を提出。3月下旬に経済産業省からの再考指示を受けて、4月に再度申請を提出しています。
経済産業省は検討を続けてきましたが、5月16日、政府は「物価問題に関する関係閣僚会議」を開催。最終的には値上げを了承する、という結論となりました。
このように規制料金の値上げには、非常に多くのステップを踏まなければなりません。北陸電力など前回値上げしたのは1980年4月なので、43年ぶりの値上げとなります。
値上げ率は平均15~40%で、6月1日より実施されています。
■電気代の値上げ([図表1]参照)
2022年11月~2023年1月に規制料金について、北海道電力、東北電力、東京電力エナジーパートナー、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の7社が経済産業省に値上げを申請。
再考指示を受けて、7社中6社は値上げ幅を下げる形で、4月上旬に再度、申請が行われた(北陸電力のみは値上げ幅を増加)。最終的に経済産業省は、上記右の数値で各社の値上げを認可。6月1日より値上げが実施されている。