G7各国の男女間賃金格差の推移
そもそも日本は男女間賃金格差が大きい。
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、男性労働者の月の平均賃金が約31万円であるのに対し、女性は約26万円であり、女性は男性の76%に留まっている1。
過去20年間で、男女差は約10ポイント縮小したものの、G7諸国と比べても格差が大きい。日本では、女性はパートや契約社員などの非正規雇用が多いためだが、正規雇用だけを比べても、男女間には格差がある2。
図表2に、日本を含むG7と韓国の男女間賃金格差の推移を示した。各国において、男女間の賃金差が、男性の賃金の何%に相当するかを示すもので、グラフの上に行くほど格差が大きい。日本(赤色)は韓国(緑色)と比べると差が小さいが、他のG7諸国に比べると差が大きいことが分かる。
このような状況を打開しようと、「女性の活躍」を国の成長戦略に盛り込み、最重要課題に押し上げたのが第二次安倍政権だ。
政府は2003年から「女性の管理職比率30%以上」を目標に掲げていたものの、進捗していなかったため、安倍首相(当時)が自ら旗振りをして、大企業に女性活躍に関わる計画策定や情報開示を義務付ける女性活躍推進法を2015年に成立させた。経済界もこれに応じて、女性社員の管理職登用を急いだ。
しかし、女性の雇用全体を見れば、非正規雇用が過半数を占めていることなどから、「既に活躍している一部の女性を一層、輝かせるだけ」「女性労働者の間に格差が広がる」といった批判も出された。
企業の現場でも、何とか「初の女性役員」「初の女性管理職」を達成したものの、登用されたのは未婚や子がいないために長時間労働が可能な女性だけで、後に続く女性人材が足りない、育児との両立を希望する女性のロールモデルにできない、といったケースがあったのではないだろうか。
それに対し、2022年施行の改正女性活躍推進法では、常用労働者301人以上の大企業に対し、「男女間賃金格差」の公表が義務付けられた。今回の女性版骨太の方針原案は、その対象を常用労働者101人~300人の企業にまで拡大することを検討する、というものである。
男女間賃金格差の解消は、一部の優秀な女性社員を管理職登用するだけでは解消しない。
女性社員が出産後に退職したり、基幹的なキャリアコースから外れたりすることを防ぐなど、女性社員全体が、ライフイベントを経ても働き続け、男性同様にキャリアアップしていけるように、雇用管理や人事制度全体を見直す必要がある。
そのためには結局、長時間労働や転勤制度の見直しなど、男性を含めた職場全体の働き方を見直さなければならなくなる。「男女間賃金格差の解消」は企業にとって、抜本的に業務見直しと働き方改革を迫る、ハードルの高い指標と言える。
逆に、それが達成されれば、キャリアを積み、スキルを培った女性人材が企業に蓄積され、女性管理職も増えていくだろう。「男女間賃金格差の解消」は、女性活躍の土台を築き、企業の事業変革に資すると期待できる3。
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