不動産投資でお金を稼ぐ!…「投資利回りの考え方」と「具体的な投資戦略」【不動産に強い税理士が解説】

不動産投資でお金を稼ぐ!…「投資利回りの考え方」と「具体的な投資戦略」【不動産に強い税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

土地は所有しているだけではお金がかかる一方ですが、うまく活用すれば、長期にわたって賃料を得たり、売却でまとまった利益を得たりすることが可能です。ここでは、不動産投資の利回りの計算、投資価値の評価、土地の有効活用の基本についてみていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

不動産投資の「収益」と「リスク」

不動産から得られる収益には、インカムゲインである「賃料収入」と、キャピタルゲインである「売却益」があります。

 

一方、不動産投資のリスクには、売却価格が変動する「価格変動リスク」と、売却まで時間がかかる「流動性リスク」があります。

 

一般的に、不動産価格は、不動産市場の相場だけでなく、金利や景気の動向や税制などの影響を受けやすく、将来の価格を予測することは容易ではありません。

 

★不動産投資の利回り計算と土地活用についてはこちらをチェック

【FP3級】不動産投資マスターへの道!利回り計算と土地活用の極意を解説

不動産投資の利回り…収益性&採算性を調べるには?

不動産投資の収益性や採算性を分析する手法として、主なものに、投資利回りによる評価や、内部収益率、レバレッジ効果といったものがあげられます。

 

(1)投資利回り

「投資利回り」とは、総投資額に対する年間の収益の割合を示すものです。主なものに、単純利回りと純利回りがあります。

 

「単純利回り」とは、総投資額に対する年間賃料収入の割合です。諸経費を考慮していないため、表面利回りとも呼ばれます。

 

[図表1]単純利回りの計算方法

 

これに対して、「純利回り」とは、総投資額で対する年間純収益の割合です。純収益は年間賃料収入から諸経費を差し引いて計算されたもので、「ネット・オペレーティング・インカム」とも呼ばれます。ただし、この諸経費には減価償却費や借入金利子は含まれていません。

 

[図表2]純利回りの計算方法

 

(2)内部収益率

「内部収益率」とは、対象不動産から得られる純収益またはキャッシュ・フローの割引現在価値の合計額が、不動産購入価格と等しくなるような割引率をいいます。

 

内部収益率が投資家の要求する収益率を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができます。

 

(3)レバレッジ効果

不動産投資は、多額の資金を必要とするため、借入金によって資金調達することが一般的です。対象不動産の収益率が、借入金の利率を上回っている場合、借入金の比率を上げることで、自己資金に対する投資収益率が上昇します。このような効果を、レバレッジ効果といいます。

 

レバレッジとは、テコを意味しています。テコの原理のように、少ない自己資金で大きな収益率を上げることができるので、「レバレッジ効果」とよばれているのです。

 

たとえば、年間の純収益が6%で600万円、投資額1億円の賃貸アパートを全額自己資金で購入した場合を想定してみましょう。

 

投資収益率は「600万円÷1億円」で6%となります。これに対して、投資額の半分5,000万円を年利4%で銀行から借り入れた場合、自己資金は5,000万円で済むこととなります。

 

この際、5,000万円の投資に対する純収益は、600万円から支払利息200万円を差し引いた400万円となりますが、投資収益率は「400万円÷5,000万円」で8%に上昇します。

 

6%から8%への上昇、これがレバレッジ効果です。

不動産の投資価値の評価は「直接還元法」「DCF法」で確認!

不動産に対する投資価値は、「収益還元法」で評価することができます。収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。

 

直接還元法とは、一年間の純収益を還元利回りで割り返して収益価格を算出する方法です。

 

これに対して、DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益またはキャッシュ・フローを、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を算出する方法です。

 

[図表3]DCF法のイメージ

 

つまり、DCF法による収益価格は、保有期間中に生み出される純収益の現在価値の合計額と、保有期間満了時点における売却価格の現在価値を合算したものになります。

 

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所有しているだけでお金がかかる「土地」…有効活用の方法は?

土地は、所有しているだけでも固定資産税の負担が発生します。そこで、更地を所有している場合に、そこ建物を建築して賃貸することで収益を得ることを考えます。これを「土地の有効活用」といいます。

 

土地の有効活用の方式としては、主なものに「自己建設方式」「事業受託方式」「土地信託方式」「等価交換方式」「定期借地権方式」および「建設協力金方式」などがあります。

 

通常、土地の有効活用という場合、自分で建物を建てて貸すのか、土地を貸すのかに大別されます。

 

(1)自己建設方式

自己建設方式とは、土地所有者が土地を所有したまま、建物の企画から設計、施工、運営、管理まで自ら行う方式です。建物の建設資金は、土地所有者が負担します。

 

自己建設方式によれば、建物から得られる収益全てが自分のものとなり、収益性が高くなります。ただし、事業リスクは大きく、賃貸経営のノウハウなどの専門知識が必要です。また、事業の運営を全て自分で行わないといけないため、手間がかかります。

 

[図表4]自己建設方式のイメージ

 

(2)事業受託方式

事業受託方式とは、土地所有者が土地を所有したまま、受託者である不動産開発業者に建物の企画から設計、施工、運営、管理までの業務を委託する方式です。建物の建設資金は、土地所有者が負担しなければなりません。

 

事業受託方式によれば、開発業者の賃貸経営ノウハウを活用することができ、専門知識がなくても土地活用を行うことができます。しかし、開発業者の選定が重要になり、事業報酬を支払わないといけません。

 

[図表5]事業受託方式のイメージ

 

(3)土地信託方式

土地信託方式とは、土地所有者が信託銀行に土地を信託し、受託者である信託銀行が建物の建設資金を負担して、建物の企画から、設計、施工、運営、管理まで一切の業務を行う方式です。土地の所有権は、信託時に信託銀行等に移転しますが、実質的な所有者は本来の土地所有者です。

 

つまり、土地所有者は、建物から得られる収益から、諸経費や信託報酬を差し引いたものを配当として受け取れます。信託期間終了後は、信託財産である土地および建物が現状のまま委託者に引き渡され、所有権も土地所有者に戻されます。

 

土地信託方式だと、信託銀行等の不動産事業に関するノウハウを利用できるため、専門知識がなくても土地活用ができます。なお信託配当は実績配当であるため、配当収入は保証されていません。

 

[図表6]土地信託方式のイメージ

 

(4)等価交換方式

等価交換方式とは、土地所有者が土地を、開発業者が建物の建築費を提供し、完成したビルやマンションなどの建物とその敷地を、それぞれ提供した資産の比率に応じて所有するというものです。

 

等価交換方式では、建物の建設と運営を開発業者に任せることができるため、土地所有者の業務負担が軽減されます。また、土地所有者は、建物の建設資金を負担する必要がなく、建設された建物の一部を取得することができます。しかし、土地の一部は手放すことになります。

 

通常は、土地を譲渡すると、譲渡所得が発生して所得税が課されます。しかし、等価交換方式により土地を譲渡した場合は、一定の要件を満たしていれば、「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」の適用を受けることによって、譲渡所得の全額または80%を将来に繰り延べることができます。

 

[図表7]等価交換方式のイメージ

 

(5)定期借地権方式

定期借地権方式とは、借地借家法に定められている定期借地権を設定して土地を貸し出すことをいいます。

 

定期借地権には、「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」の3つがありますが、借地期間の更新がないため、土地所有者は、土地の所有権を手放すことなく、比較的安定した収入を確保することができます。ただし、土地だけを賃貸することになるため、建物の賃貸よりも収入が小さくなります。

 

[図表8]定期借地権方式のイメージ

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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