投資初心者向け〈外貨建金融商品〉のキホン…円高・円安で「利回り」はどうなる?【公認会計士が解説】

投資初心者向け〈外貨建金融商品〉のキホン…円高・円安で「利回り」はどうなる?【公認会計士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

資産分散のため、外貨建て金融商品の購入を検討している方も多いと思います。もちろんメリットはありますが、一方で、為替のしくみとリスクについて正しく理解できていない状態で手を出してしまっては危険です。ここでは超初心者向けに、外貨建金融商品と為替の考え方、利回り計算についてみていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「外貨建金融商品」にはどんな種類がある?

売買や利息の支払いなどが外貨で行われる商品のことを「外貨建商品」といいます。たとえば「外貨預金」「外国債券」「外国株式」「外国投資信託」などがあります。下記、簡単に説明します。

 

外貨預金とは、外貨建てで行う預金のこと。円を外国の通貨に換えて預け入れるため、通貨を交換する際に為替手数料がかかります。為替手数料を支払い、為替差損が発生するような場合には、元本割れとなる可能性もあるので注意が必要です。また、外貨預金は預金保険制度の対象外です。

 

外国債券とは、発行体、発行場所、通貨のいずれかが外国である債券のこと。外国発行体が日本国内で円建て発行するサムライ債、外貨建て発行するジョーダン債などがあります。

 

外国株式とは、外国の企業が発行する株式のこと。

 

外国投資信託とは、外貨建投資信託のこと。代表的な商品として、外貨建MMFがあります。

 

★外貨建ての金融商品とその利回り計算についてはこちらをチェック!

外貨建て金融商品の秘密!為替の円高・円安で変わる利回りの計算法

「為替レート」と「手数料」の考え方

外貨建商品を購入するには、円を外貨に換えて支払わなければいけません。逆に、金融商品を満期償還または売却するには、外貨を円に換えて受け取らなければいけません。

 

円と外貨の交換比率である「為替レート」には、「TTS=対顧客電信売相場」と「TTB=対顧客電信買相場」の2種類があります。

 

円を外貨に換えるレートがTTSです。TTSのSは「Sell(セル)」の頭文字で、銀行が顧客に外貨を売るレートを意味しています。

 

逆に、外貨を円に換えるレートがTTBです。TTBのBは「Buy(バイ)」の頭文字で、銀行が顧客から外貨を買うレートを意味しています。

 

そして、TTSやTTBを決める際の基準となる為替レートとして、「TTM」があります。この値に為替手数料を考慮してTTSおよびTTBが決定されるため、TTMは、ちょうどTTSとTTBの中間に位置することとなります。

 

たとえば、TTMが130円で、為替手数料が1円であれば、TTSは131円、TTBは129円となります。

 

[図表1]TTS・TTM・TTBのイメージ

外貨建商品の「メリット」と「リスク」

外貨建商品には、日本に比べて外国の金利が高いときに、高金利を選択できるメリットがあります。しかし、為替相場の影響を受けるため、為替リスクを伴うデメリットがあります。

 

つまり、購入時と比べて満期・売却時の為替レートが円安となっていると利益が得られますが、円高になっていると損失が出ます。このような変動を「為替リスク」といいます。

 

為替手数料は無視するとして、たとえば「1ドル100円」のときに「1万ドル」の外貨建商品を購入し、100万円を支払ったとしましょう。円安が進み、売却時に「1ドル120円」となっていれば為替差益が得られ「120万円」を受け取ることができます。反対に、円高が進んで売却時に「1ドル80円」となっていれば為替差損が生じ、「80万円」しか受け取ることができません。つまり、元本割れです。

 

[図表2]外貨建商品の為替メリット・リスクのイメージ

外国為替相場の変動

外国為替相場が変動する要因として「景気」「金利」「物価」があります。

 

日本の景気が上昇すると、日本の金利が上昇します。それに伴い、日本の金融商品の利回りが上昇すると、外国人投資家や外国企業がドルを売却して円を買おうとするでしょう。結果として、円高・ドル安になります。

 

反対に、景気が後退すると金利が下がります。それに伴い、日本の金融商品の利回りが下落すると、外国人投資家や外国企業が円を売却してドルを買おうとするでしょう。結果として、円安・ドル高になります。

 

物価も為替レートの変動をもたらします。たとえば、マクドナルドのハンバーガーの値段を例にして考えてみましょう。

 

日本でも米国でも同じハンバーガーを買うことができます。ハンバーガーの値段が日本では100円、米国では1ドルだったと仮定しましょう。ハンバーガーが日米どちらも同じ価値であるとすると、為替レートは、1ドル=100円になると考えられます。

 

その後、日本の物価が上昇し、ハンバーガーの値段が120円になったとすると、1ドルと120円が同じ価値をもつことになり、為替レートは、1ドル=120円になると考えられます。

 

ハンバーガーの例は、あくまでも理論上のたとえではありますが、日本の物価が上昇すると円安・ドル高になり、物価が下がると円高・ドル安になります。一方で、アメリカの物価が上昇すると円高・ドル安になり、物価が下がると円安・ドル高になるということです。

 

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外貨建商品「利回り計算」のやり方

外貨建商品に投資する際には、為替手数料や税金などを考慮した手取りの利回りを把握することが大切です。

 

たとえば、先ほどの『外貨建商品の「メリット」と「リスク」』で取り上げた計算例に手数料を考慮して、利回りを計算してみましょう。

 

1ドル100円のときに1万ドルの外貨建商品を購入して100万円を支払いましたが、売却時に1ドル120円となったことで、120万円を受け取ることができたと考えました。しかし、実際には、手数料と利息と税金が発生します。

 

1ドル100円というのは、TTMが100円という意味です。したがって、外貨を買うときのTTSは為替手数料が上乗せされて101円です。

 

その後、円安が進んで1ドル120円になるというのは、TTMが120円になるということです。したがって、外貨を売るときのTTBは為替手数料が差し引かれて119円になります。

 

逆に、円高が進んで1ドル80円になるというのは、TTMが80円になるということです。したがって、外貨を売るときのTTBは為替手数料が差し引かれて79円になります。

 

以上から、金利を無視して利回りを計算しましょう。円安になった場合、101円を支払って119円になったということで、利回りは18%となります。

 

逆に、円高になった場合、101円を支払って79円になったということで、利回りはマイナス22%となります。つまり、円安になっても、円高になっても、為替レートが変化しなくても、常に為替手数料の約2%が目減りしてしまうということなのです。外貨建商品で利益を出そうとするのであれば、為替手数料の2%を上回る金利または為替差益を得なければいけません。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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