マンションオーナー、「60平米所有者」の議決権は「30平米所有者」の2倍…区分所有権の考え方【FPが解説】

マンションオーナー、「60平米所有者」の議決権は「30平米所有者」の2倍…区分所有権の考え方【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

自宅として暮らすため、投資のため…。マンション購入の動機はさまざまですが、個々の部屋を所有する権利のことを「区分所有権」といいます。ここでは、マンションの区分所有者が知っておきたい、区分所有権、敷地利用権、管理組合、決議要件についてみていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

建物の個々の部屋を所有の対象とする権利=「区分所有権」

建物の一部である個々の部屋を所有の対象とする権利を「区分所有権」といいます。区分所有権を持っている人を「区分所有者」といいます。区分所有法は、区分所有者による建物やその敷地の所有関係や、建物の共同管理についてのルールを定めています。

 

区分所有された建物は「専有部分」と「共用部分」に分けることができます。

 

建物のうち構造上の独立性と利用上の独立性を備えた部分を「専有部分」といいます。

 

また、区分所有者が、共同で使用するエントランスロビー、廊下や階段などを共用部分といい、「法定共用部分」と「規約共用部分」があります。共用部分は、区分所有者の共有になり、専有部分と分離して処分することはできません。共用部分に対する持分は、各区分所有者が持っている専有部分の床面積の割合によって決められます。

 

★区分所有と管理組合についてはこちらをチェック

【FP3級】マンション購入の落とし穴!区分所有権と管理組合を徹底解説

区分所有者が建物の敷地を利用する権利=「敷地利用権」

区分所有する建物は、敷地の上にあるため、区分所有者がその敷地を利用する権利を持っていなければなりません。この権利を敷地利用権といいます。敷地利用権は、ほとんどの場合が所有権ですが、地上権や賃借権などの借地権でも構いません。

 

敷地利用権は、専有部分と分離して処分することはできません。

 

[図表1]専有部分・共有部分・区分所有建物の敷地のイメージ

 

[図表2]区分所有権・共有持分権・敷地利用権の対象となる部分

区分所有者になれば、自動的に「管理組合」の組合員に!

区分所有者は、全員で、建物や敷地などの管理を行うための管理組合を作ります。区分所有者になれば自動的に管理組合の組合員となるため、管理組合に任意に加入または脱退することはできません。管理組合は、区分所有法の定めに従って、集会を開き、規約を定め、管理者をおくことができます。

 

ちなみに、掃除やゴミ集めなど実際のマンション管理業務を行うのは、管理組合から業務を委託された管理会社です。

 

集会は、管理組合の最高意思決定機関です。ここでは、普通決議または特別決議によって決議されます。普通決議は、区分所有者および議決権の過半数の賛成で決議され、特別決議は、4分の3以上、または、5分の4以上の賛成で決議されます。

 

区分所有法では、多数決の基準として、「区分所有者」と「議決権」を併用しています。「区分所有者」とは、1つの専有部分を所有している人のことです。また、「議決権」とは、各区分所有者が決議に行使できる権利のことで、区分所有者が持っている専有部分の床面積の割合によることとなっています。

 

たとえば、60平方メートルの部屋を所有するAさんと、30平方メートルの部屋を所有するBさんがいた場合、「区分所有者」という基準では、どちらも1人ですが、「議決権」による場合は、AさんはBさんの2倍の権利をもつことになります。この2つの基準がともに多数決の基準を満たしていた場合に、その決議が有効となるわけです。

 

管理者は、区分所有者を代理して建物やその敷地の管理を行います。一般には、管理組合の理事長が管理者となります。管理者は、普通決議によって選任または解任されます。区分所有者ではない人を管理者として選任することも可能です。

規約」とは、区分所有者が自主的に定めた規則のこと

規約とは、区分所有者が自主的に定めた規則のことです。この規約の設定・変更は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による決議によらなければいけません。

 

規約および集会の決議は、区分所有者や相続人だけでなく、売買で区分所有権を譲り受けた人にも効力を及ぼします。また、建物や敷地の使用方法については、部屋を賃借している入居者も従わなければいけません。

 

区分所有者や入居者は、建物の管理または使用に関して、規約にしたがい、区分所有者の共同の利益に反する行為を行うことはできません。この義務に違反した場合、他の区分所有者の全員は、その行為の停止、専有部分の使用禁止、入居者の契約解除と専有部分の引渡しを請求することができます。

地震や火災で建物の一部が失われたら?…「復旧」の考え方

地震や火災などで建物の一部が燃えてしまった場合は、その部分を復旧しなければいけません。しかし、損害の程度によっては、復旧を望む人もいれば、建替えを望む人も出てくることでしょう。そこで、区分所有法は、建物の復旧および建替えの手続きを定めています。

 

建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失してしまったことを小規模滅失といいます。この場合、集会決議があった場合を除いて、各区分所有者が単独で、滅失した共用部分を復旧することができ、復旧に要した費用を、共用部分の持分に応じて、他の区分所有者に請求することができます。

 

これに対して、建物の価格の2分の1超に相当する部分が滅失してしまったことを大規模滅失といいます。この場合、各区分所有者が単独で復旧することはできず、滅失した共用部分を復旧するには、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による集会決議が必要となります。

 

★不動産の売買契約についてはこちらをチェック

【FP3級】不動産取引とは?売買契約と取引条件を学ぶ

「建替え」の実現には、どれくらいの賛同があればいい?

建替えとは、いま建っている建物を取り壊して、その敷地に新たな建物を建築することです。建替えには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成による集会の決議を必要とします。

 

[図表3]管理組合での議題の内容と議決権の票数

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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