金融市場=「資金を貸し借りする市場」
金融市場とは、資金を貸し借りする市場のことです。銀行、証券会社、保険会社だけでなく、国や上場企業などが参加しています。
金融市場は、満期までの期間が1年未満の短期金融市場と、1年以上の長期金融市場とに分けることができます。
また、短期金融市場には、銀行同士が取引するインターバンク市場と、一般企業も参加するオープン市場があります。また、長期金融市場は株式市場と債券市場に分けることができます。
景気や経済の分析に活用する、代表的な「経済指標」とは?
株式や債券を対象とする資産運用では、景気や経済を分析することが必要となります。そのための主な指標として、国内総生産、経済成長率、景気動向指数、日銀短観、マネーストック統計、物価指数などがあります。
(1)GDP(国内総生産)
GDP、すなわち国内総生産とは、1年間に国内で生みだされた付加価値の合計のことをいいます。ここでの付加価値とは、財・サービスなどの生産額から、それらを生産するためにかかった費用を差し引いたものをいいます。
GDPは一国の経済規模を表しており、一国全体の経済活動をとらえる代表的な指標として、内閣府が4半期ごとに発表しています。GDPには、物価変動を考慮しない「名目GDP」と、物価変動を考慮した「実質GDP」があります。名目GCPを、物価指数を意味する「GDPデフレーター」で割ると、実質GDPとなります。
国内で生み出された付加価値は、必ずだれかに利用されるか、在庫として残ります。したがって、供給側から測定した生産額と、需要側から測定した支出額は等しくなり、さらに分配される金額とも等しくなります。すなわち、「生産=支出=分配」という等式が成り立ちます。これを三面等価の原則といいます。
マクロ経済学でよく使う支出側の国内総生産は、民間消費と民間投資、政府支出、財貨・サービスの純輸出によって構成されています。支出のなかでは、個人消費とも呼ばれる「民間最終消費支出」が最も大きく、全体の約6割を占めています。
(2)経済成長率
経済成長率とは、一国の経済がどの程度成長しているのかを示すものです。通常は、実質GDPの前期比の伸び率を使います。
たとえば、前期の実質GDPが500兆円で、今期の実質GDPが510兆円であれば、実質GDPは10兆円の増加ですから、経済成長率は、10兆円を500兆円で割って2%となります。
(3)景気動向指数
景気動向指数は、景気変動の大きさを表すコンポジット・インデックス(CI)と景気の転換点を判定するためのディフュージョン・インデックス(DI)があり、内閣府が毎月発表しています。
コンポジット・インデックスおよびディフュージョン・インデックスには、景気に先行して動く「先行指数」、景気と一致して動く「一致指数」、そして、景気に遅れて動く「遅行指数」の3つの系列があります。
一致指数には、有効求人倍率など10項目あります。有効求人倍率は、有効求人数を有効求職者数で除したものであり、1倍を超えると企業からの求人数が求職者数を上回っていることを意味することになります。一般に、一致指数が上昇しているときは景気拡張局面、低下しているときは景気後退局面となります。
(4)日銀短観・業況判断DI
日銀短観とは、「全国企業短期経済観測調査」のことで、3ヶ月に一度公表されます。そこで、調査対象企業1万社に対して「景気がいいか悪いか」を質問して得られた回答としての「業況判断DI」が示されます。業況判断DIの値が下降に転じたときは景気も後退局面入りし、上昇に転じたときは回復局面入りします。
(5)マネーストック統計
マネーストックとは、世間に出回っている通貨量のことで、日本銀行が毎月公表しています。ただし、国や金融機関が保有する通貨は、これに含まれません。
マネーストックは、物価と深い関係があり、マネーストックが増加すると物価が上がる傾向にあります。
(6)物価指数
物価水準を測る主な指標として、消費者物価指数と企業物価指数があります。
消費者物価指数は、消費者が購入する商品やサービスなどの価格の動きを示す指数です。一方、企業物価指数とは、企業間取引における商品の価格の動きを示す指数です。
企業物価指数のほうが、原油価格や外国為替の変動の影響を受けるため、消費者物価指数よりも変動が大きくなります。また、消費者物価指数は、企業間で取引が行われた商品が消費者に届く段階で計算されるため、企業物価指数よりも遅れて変動します。
物価水準が継続的に上昇し、通貨の価値が下落する状況をインフレーションといいます。逆に、物価水準が継続的に下落し、相対的に通貨の価値が上昇する状況をデフレーションといいます。
景気の変動
景気は、企業や個人が儲かっているかどうか、利益や所得の大きさを表現するものです。利益や所得が増えているときは景気がよく、利益や所得が減っているときは景気が悪いと言われます。
(1)景気と経済
景気がいいときは、人々の購買意欲が高まり、モノが売れて企業の利益が増えます。その結果、企業は投資や雇用を増やすことから、他社のモノが売れて、企業の利益が増えます。また、企業は雇用を増やすと同時に給料やボーナスの支払いを増やすことから、個人の所得が増えます。これがグルグル回る好循環が広がり、経済全体が成長するのです。
逆に、景気が悪いときは、人々の購買意欲が冷え込み、モノが売れないことで企業の利益が減ってしまいます。その結果、企業は投資や雇用を減らすことから、他社のモノは売れないことで企業の利益は減ります。また、企業は雇用を減らすと同時に給料やボーナスの支払いを減らすことから、個人の所得が減ってしまいます。これがグルグル回る悪循環が広がり、経済全体が停滞するのです。
(2)景気と株価
好景気になると、将来の企業利益の増加に対する期待を通じて上場株式が買われ、株価が上昇します。株価が上昇すると、個人持っている金融資産に含み益が発生します。このため、個人は消費を増やすようになり、景気にプラスの影響を及ぼします。
逆に、不景気になると、将来の企業利益の減少に対する不安を通じて上場株式が売られ、株価が下落します。株価が下落すると、個人持っている金融資産に含み損が発生します。このため、個人は消費を抑えるようになり、景気にマイナスの影響を及ぼします。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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