急速な人口減少に伴い、様々な業界でマーケットの縮小が続いています。苦境に立たされる中小企業は、生き残りのためにどのようなビジネスモデルを築くべきでしょうか。本連載では、戸波亮氏の『葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた』の中から一部を抜粋し、新事業展開によって経営基盤強化を実現した葬儀会社の事例を紹介しながら、中小企業の生き残り戦略を探ります。

「自前のセレモニーホール」と「借地」を結びつける

 

祖母の会社が一つめのセレモニーホールで躓いたのはそういう理由もありました。そこでは、新しいセレモニーホールについては土地から購入するのではなく、借地に建物を建てることにしました。そうすれば投資額と借入金をかなり抑えることができます。

 

決して奇抜なアイデアというわけではないはずですが、祖母はこのやり方を採りませんでした。葬儀業界の常識ではそれまで考えにくかった、「自前のセレモニーホール」と「借地」という2つを、私はただ決算書の知識から当然に行き着いた論理で結びつけました。これも立派なイノベーションだと思っています。

 

また、【資産】のうち建物については減価償却分の額が毎期、貸借対照表の上で減っていきます。そのとき【負債】に計上された借入金も同じペースで減っていけば【純資産】が削られることもなく問題ありません。そのためには借入金の元金を返済していくキャッシュを事業から生み出すことが必要です。

 

事業からキャッシュを多く生み出すには、利益率は同じまま売上高を伸ばすか、同じ売上高のまま利益率を改善するかです。実際には、競争が激しいなかで売上高を伸ばすのは簡単ではありません。手っ取り早いのは利益率を改善することです。

 

利益率を改善するには、経費を削減するしかありません。経費で最も大きいのは人件費ですが、社員のモチベーションに関わるので手を付けるわけにはいきません。残るは外注費です。葬儀の実施にあたってはさまざまな物品やサービスを外部から調達しており、私の会社でも生花は花屋から、通夜振る舞いや精進落としの食事は料理店に外注していました。

 

ここを自社で内製化できれば利益率が改善され、そこで生まれたキャッシュを借入金の返済に回していけば、多額の設備投資で膨らむ貸借対照表もバランスよくコントロールできるはずです。

 

こうしたロジックを何度もシミュレーションし、企画書にまとめ、金融機関と交渉し、代表取締役となった翌年の1998年、2つめのセレモニーホールのオープンにこぎつけることができました。

 

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葬儀会社が農業を始めたら、 サステナブルな新しいビジネスモデルができた

葬儀会社が農業を始めたら、 サステナブルな新しいビジネスモデルができた

戸波亮

幻冬舎メディアコンサルティング

市場が縮小する業界で生き残る! 外注業務の内製化を突き進めてたどり着いた異業種参入 経営危機から8つの事業を展開、 資産総額27億円まで成長できた戦略とは―― 日本の人口が減少するのに伴って、市場規模が縮小…

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