中小企業の生き残りには新事業展開が不可欠
中小企業がイノベーションを発揮して厳しい経営環境を乗り越えていくには、これまでの本業にしがみついているだけではだめです。鍵を握るのが新事業展開です。
一般に新事業展開とは、新市場開拓、新製品開発、多角化、事業転換の4つです(経済産業省「中小企業白書2017年版」)。
実際に多くの中小企業がこれらの新事業展開に取り組んでいますが、その成功の確率は1~3割程度ではないかといわれます。私の会社の場合、葬儀業としては地域で最も後発であり、顧客基盤もしっかりしていませんでした。そのためセレモニーホールを一つ、全額借入金で作った途端に経営が悪化しました。
役員のコストカットと社員の意識改革を進めるのと並行して、私は地域の葬儀市場で生き残るためにはセレモニーホールをさらに増やしていく必要があると考えました。しかし、セレモニーホールを土地から取得して建てるとなると億単位の資金が必要になります。
祖母と同じ失敗を繰り返すわけにはいきません。そのとき役立ったのが決算書を読めて、自分でも作れるようになっていたことです。決算書を眺めているうちにヒントが見えてきました。
セレモニーホールを新たに作るためまとまった金額の設備投資をすると、図1の貸借対照表の上では左側の【資産】に土地と建物の簿価が計上され、右側の上にある【負債】には借入金が計上されます。
【資産】が増えるとともに【負債】も一気に膨らみ、資本金を中心とする【純資産】の割合がガクッと低下してしまいます。ちょっとした損失が生じるとたちまち債務超過に転落です。
例えば、【資産】に計上される土地、建物のうち土地は簿価のままですが、実際にはバブル崩壊後は地価が下落して含み損が発生しやすくなっていました。土地を時価評価すると【純資産】がマイナスに転落しかねません。
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