(※写真はイメージです/PIXTA)

2021年の輸出総額は401億円以上で過去最高と、海外人気が高まり続けている日本酒。しかし、欧州のワインと比較すると、ワインは50万や100万円の値が付くものが存在することが多くの人に知られていますが、日本酒はそもそもそのレベルの価格帯のものは少なく、認知度も低いです。この差は一体なんなのでしょうか? みていきます。

目指すべきは「プレミアム」ではなく「ラグジュアリー」

では、どうやったら価値を高められるのか? それには、日本酒を通じて自分たちが「お客さまに提供できる価値はなにか?」を追求することが必要です。「おいしさ」という機能的価値を高めるだけではなく「所有欲求や、嗜む際の高揚感」といった情緒的価値を提供することです。

 

さらに、それを「相対的な価値」ではなく「絶対的な価値」として造り手が自信をもって発信することが重要です。そうすることで、価格を造り手自身で決めることができ、価値を高めることにつながります。

 

(出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)
[図表]ラグジュアリーブランドに存在する2つの解釈 (出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)

 

これはまさに、「憧れの数値」を最大化させるラグジュアリーブランドの戦略と同じであり、競合ブランドが存在するなかで、相対的にみて高付加価値なカテゴリーと定義される、プレミアムブランドとは戦略がまったく異なるのです。

「NFT×日本酒」によるリブランディング

2022年5月に、「日本酒の価値をNFTアートで世界に届ける」というミッションを掲げ、(株)小野酒造店と(株)Torchesが共同事業で、日本酒の作品価値をNFTでも持続的に保護しブランディングする仕組みを取り入れた純米大吟醸が、数量限定で発売されました。価格はなんと123万円。

 

※「代替できない=唯一無二の価値」を持ったデジタルデータ

 

寝かせることでヴィンテージ価値が付くワインと異なり、日本酒の賞味期限は1年以内が目安。飲み終わったら価値がなくなるので、先述した「絶対的な価値」を長期間継続させることが難しく、ラグジュアリーブランドとして価値を上げづらい側面があります(希少性が高まることで投資価値が上がるといった所謂「ワイン投資」のような流通が不可能)。

 

この問題の解決策として同社は、日本酒を味わった後もブランド価値を永続的に保ち続け、そこに込めたメッセージを世界中に届けられるように、ボトルとパッケージに「絶対的な価値」を付与しました。パッケージには、有名浮世絵師による本格的な描き下ろし。ボトルには、漆加工職人の手仕事による絵付け。これらのデザインは1点1点すべてにシリアルナンバーが付与され、NFTアートとして認証されるそうです。

 

すでにウイスキーやワインはNFTマーケットで多数流通していますが、日本酒もボトルデザインに日本の伝統工芸や職人技を施すことでNFTとの親和性が高まります。NFTは、今後日本酒ブランドの価値を高める加速装置になりそうです。

価値を高める=持続可能性を高める

ワインも日本酒も、古来から伝わる職人製法で商品ができあがります。酒造や農家等の造り手が減少する中、今後生産量を増やすことは難しく、いまのままの価値(販売価格)では、「酒造りの文化」や「職人」を経済的に守ることができず、持続可能性を問われています。

 

さらには原材料費の高騰による販売価格の押し上げといった、価値が変わらぬままの値上げが今、あらゆる市場で急速に増えてきています。

 

いまこそ、ブランディングの力で価値を高め、生産者・メーカー・販売者といったサプライチェーン全ての関与者を守り抜き、持続可能な事業をデザインしなければならないタイミングです。そのためには、まずは自社の強みや独自性を改めて理解し、提供できる価値に誇りを持ち、発信し続けることが自分達のブランドを成長させることにつながるのだと思います。

 

 

戸田 成人

株式会社 YRK and

ブランディングストラテジスト

 

越野 浩平

株式会社 YRK and

インバウンドマーケティングチーム

 

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※本コラムは「#日本人の良き性格が招いたブランドの弱さ」から一部文章を引用し改訂版として、戸田氏と越野氏が執筆した「YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム」の転載です。

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