「費用がかかる」のに「キャッシュが増える」のはなぜ?ビジネスで「投資の効果」を正しく把握するには「税金の理解」が必須なワケ【公認会計士が解説】

「費用がかかる」のに「キャッシュが増える」のはなぜ?ビジネスで「投資の効果」を正しく把握するには「税金の理解」が必須なワケ【公認会計士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

企業がなんらかの「投資」を行う場合、「税金」が及ぼす影響を正しく理解しないと、思わぬ損をする可能性があります。特に重要で誤解しやすいのが「減価償却」の効果です。「IT」に精通した公認会計士である金子智朗氏が、著書『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)より、わかりやすく解説します。

「税金」を考慮する際に気をつけたいポイント

次のケースを使って、税金の考慮の仕方を具体的に見ていきましょう。

 

【演習問題】

一括払いで1億円のシステムを購入します。

 

これによって紙の使用量が削減でき、毎年2,000万円の費用が削減できます。一方で、減価償却費が毎年500万円かかります。税率は30%です。

 

さて、税金への影響はどのようになるでしょうか?

 

まず、システム導入にかかる1億円のキャッシュが減少します。

 

この1億円は、購入時点では全額資産に計上されるだけで、費用にはなりません。つまり、損益計算書には何もインパクトがありませんから、この1億円に対する税金の影響はありません。

 

次に、紙の使用量を減らすことによる毎年の費用削減額2,000万円ですが、これはキャッシュ・アウトを伴う費用の削減ですから、2,000万円のキャッシュが増します。

 

一方で、費用削減によってそれだけ利益が増加しますから、その税率相当分である2,000万×0.3円だけ税金が増えます。

 

税金の増加はキャッシュの減少になりますから、結局、

 

2,000万-2,000万×0.3=2,000万×(1-0.3)円

 

だけのキャッシュが増加することになります。これはシンプルに「税引後利益の額だけキャッシュが増加する」と考えてもいいでしょう。

 

最後は、毎年の減価償却費500万円です。

 

減価償却費自身はキャッシュの動きを伴いません。一方で、減価償却費は費用なので、それだけ利益を減少させます。ということは、その税率相当分である500万×0.3円だけの節税効果が生まれます。つまり、それだけキャッシュを増加させるということです。

 

減価償却費のような費用は、それ自身はキャッシュ・アウトしませんが、会計上は費用なので、その税率相当分の節税効果が出るのです。

 

この節税効果のことを、タックス・シールドと言います。タックス(税金)が漏れ出ていきそうなところに、シールド(盾)を立てて漏れ出ていくのを防ぐようなイメージです。

 

投資をする場合、減価償却費以外でタックス・シールド効果がある重要なものは、売却損と除却損です。なお、売却益が出た場合は、それだけ利益が増加しますから、その税率相当分の税金が増え、キャッシュを減少させることになります。

 

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管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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