(画像はイメージです/PIXTA)

お通夜やお葬式はのしきたりは、自分の知識を「普通」と思ってしまいがち。しかし実際には、相当な地域差があるのです。自分の「普通」でふるまうと、その場で悪目立ちしてしまうなど、恥ずかしい思いをすることがあるかもしれません。

東京出身者が、沖縄の葬儀に参列したら…

東京生まれ東京育ちのある男性は、東京の大学で出会った沖縄出身の友人と意気投合。親しくしていましたが、卒業後、友人は故郷の沖縄へ戻ることになりました。

 

それから数年後、なんと沖縄の友人が故郷で急死したというではありませんか。

 

訃報に衝撃を受け、急遽沖縄に飛んで葬儀に参列しましたが、今度は、東京とかけ離れた「沖縄のしきたり」に衝撃――。

 

日本の冠婚葬祭のしきたりは、地域によってかなりの違いがあります。

 

東京のお通夜といえば、弔問客はきちんと喪服を着て訪問するのがマナー。お線香をあげたあとは、「通夜振る舞い」といって、弔問客が集まっている大きな部屋で飲食をしながら、故人の思い出話などに花を咲かせます。

 

ところが沖縄では、東京ほどお通夜を重視していません。読経をお願いする家は少なく、一晩中、お線香の火を消さないように香炉の番をしながら、弔問客が来た時にその対応をする程度です。しかも、弔問客は喪服ではなく平服であり、簡単な挨拶だけして、そのまま帰っていくのです。

 

ちなみに平服とは、地味な色使いの、ちょっとした外出に着ていく服、という程度の意味合いです。大勢の人が平服でお通夜に来ますから、東京のお通夜のように喪服で訪れると、周囲から浮いてしまうかもしれず、逆に礼を失する恐れもあります。

 

また、葬儀の香典も「お札が重なる=不幸が重なる」という考え方から、多くを包まないのが沖縄流です。知人や友人であれば1,000円から3,000円程度。東京では5,000円程度を包むイメージですが、それだと「包み過ぎ」とされる地域もあるようです。

事前に地域の「しきたり」「慣習の違い」を把握しておく

このように、東京と沖縄で比べてみても、お通夜やお葬式のしきたりは大きく異なります。もちろん、ほかの地方においても同じです。

 

それぞれ地元特有のしきたりがありますので、故人や遺族の方に対する礼を失しないためにも、自分の地元以外の場所でのお通夜、お葬式に参列する際には、事前にしきたりや慣習の違いを把握しておいた方が安心です。

 

たとえば、前述の通夜振る舞いひとつを取っても、関東と関西では大きな違いがあります。関東では参列者の人数に応じて、お寿司やオードブルなどを大皿に盛りつけて供するのが一般的です。そして参列者は、それに一口でも箸をつけるのが、故人への供養になると考えられています。

 

しかし関西では、一般的に通夜振る舞いの慣習がありません。故人の家族や親族など、身内で会食をすることはありますが、弔問客はお焼香をすませたら、そのまま帰るのが普通です。

お香典の慣習も、地域性が大きいため注意を

お香典についても、地域性があるので注意しましょう。

 

たとえばお香典とは別に、いくらかのお金を別に包む地域もあります。たとえば岩手県の「御夜食料」や宮城県の「お悔み」、秋田県の「御香料」などがそれです。金額は1,000円から2,000円程度です。

 

また「夜伽(よとぎ)見舞い」といって、通夜の時に遺族がお線香の火を絶やさないようにするため、一晩中寝ずの番をする夜伽をする風習のところもあります。

 

その時に遺族が集まって食事などを行うのですが、そこにお見舞いの品を持っていくのです。千葉県や徳島県のほか、西日本に多く見られるといわれています。夜伽見舞いには、食材や飲み物を持っていくのが一般的でしたが、最近は保存の効く菓子類や、現金で渡すケースもあります。

 

金額的にはそれほど大きいものではないので、事前準備を必要とするほどのものではありませんが、お焼香の際に、お盆に小銭を乗せる「焼香銭」の風習がある地域もあります。

 

かつては弔問客がお線香を持参していたのが、備え付けのお線香を使うことが多くなったことから、心づけ程度に小銭を置いてくるのが慣習となったものです。新潟県や富山県、愛知県、兵庫県、広島県などで、この慣習が見られるようですが、金額的には100円から500円程度とも言われていますので、それほど心配する必要はないでしょう。

地域のマナーにならった振る舞いで、故人を悼む

葬儀と火葬の順番にも、地域による違いが見られます。前火葬は葬儀の前に火葬を行うこと、後火葬は葬儀の後に火葬を行うことですが、一般的には後火葬が多く、特に北海道、関東、関西、九州は後火葬が大半と言われています。

 

これに対し、同じ北海道でも函館市と根室市は前火葬が行われ、東北や沖縄、その他の離島は前火葬が一般的と言われています。特に前火葬の可能性がある地域のお通夜、お葬式に参列する場合、故人の顔を見てお別れをしたいと考えているのであれば、事前に遺族の方に確認したほうがよいでしょう。

 

そのほかにも、さまざまな風習の違いがあります。茨城県ではお香典を3回に分けるケースもありますし、大阪府や和歌山県などのように、「友引」でも葬儀を行う地域もあります。

 

このように、お通夜、お葬式には、故人が生活していた地域における生活習慣や価値観、あるいは宗教観などに基づいた風習の違いがあります。転勤、結婚などで知らない土地で生活している場合など、その土地における風習の違いに注意し、お通夜、お葬式に参列する際には、地元の人に事前確認をしておきましょう。

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