(※画像はイメージです/PIXTA)

中小企業の社長にとって、自分の給与をいくらに設定するかは大きな問題です。給与の額を大きくすれば会社の経費(損金)になり法人税を減らせますが、個人の所得税と社会保険料が増えます。そこで、有効とされる方法の一つが、「ボーナス」を利用して社会保険料を抑える方法です。本記事では、その方法と、注意すべき点について、シミュレーションも交えて解説します。

「ボーナス」を利用して社会保険料を抑える方法とは

社長がボーナスを利用して社会保険料を抑える方法は「役員賞与スキーム」と呼ばれることがあります。

 

まず、前提として、社会保険料は、「毎月の給与」と「ボーナス」のそれぞれについて計算されるしくみになっています。

 

毎月の給与については「標準報酬月額」、ボーナスについては「標準賞与額」によって保険料率が決まっています。「標準報酬月額」と「標準賞与額」のそれぞれには上限が設けられており、「標準賞与額」の上限は以下の通りです。

 

【保険料率を計算する上での「標準報酬月額」「標準賞与額」の上限】

・健康保険料:年度累計573万円

・厚生年金保険料:1回あたり150万円

 

したがって、月々の給与の額を低くし、役員賞与の額を「標準賞与額」の上限よりも高く設定すると、社会保険料が抑えられ、「節約」できるということです。

「事前確定届出給与」の制度を利用する

この役員賞与スキームを活用するには、遅くとも会計年度の最初の4ヵ月以内に、ボーナスの額について「事前確定届出給与」として税務署への届出を行う必要があります(株主総会決議の日からは1ヵ月以内です)。

 

どういうことかというと、役員賞与は原則として会社の経費(損金)にできません。なぜなら、その額を恣意的に操作することよって課税回避することを防ぐためです。

 

ただし、例外として、恣意的に操作されるおそれがない場合、すなわち、事前に支給金額と支給日を決めて税務署に届出をしておく場合は、経費とすることができます。

 

また、「事前確定届出給与」は、支給金額と支給時期(日時)は、届け出た通りにしなければなりません。支給額が1円ずれても、支給日が1日ずれても、経費の計上が認められないことに、注意する必要があります。

社会保険料がいくら抑えられるか(シミュレーション)

では、「役員賞与スキーム」を活用すると、具体的に、社会保険料はどの程度抑えられるでしょうか。

 

以下、同じ「年収1,200万円」で、「役員報酬スキーム」を用いないケースと、用いるケースとで、社会保険料がいくら抑えられるか、具体例をご覧ください。

 

なお、「健康保険料」については、「介護保険料」、「子ども・子育て拠出金」を含んで計算します。

 

また、社会保険料の標準報酬月額は都道府県ごとに定められており、協会けんぽHPで確認できます。

 

◆ケース1|役員賞与スキームを用いない場合

【ケース1|役員賞与スキームを用いない場合(全額を12等分して毎月の給与として支給)】

・東京都・45歳

・協会けんぽ加入

・月給100万円、役員賞与なし(合計1,200万円)

 

1,200万円を12ヵ月に分け、月給として100万円ずつ支給すると、社会保険料総額は以下のようになります(2023年6月時点)。

 

【ケース1での社会保険料総額】

・月給にかかる健康保険料:118,176円×12ヵ月=1,418,112円

・月給にかかる厚生年金保険料:118,950×12ヵ月=1,427,400円

総額2,845,512円

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