「没後100年以上経ってるので〈本人の権利〉はないはず」→『家康』の像を作成し販売を計画…。著作権等侵害のリスクは本当にないのか?【弁護士が解説】

「没後100年以上経ってるので〈本人の権利〉はないはず」→『家康』の像を作成し販売を計画…。著作権等侵害のリスクは本当にないのか?【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人気にあやかって商売すれば、ゼロベースに比べ格段に加速しやすくなります。一方で、人の褌を使ったビジネスであり、権利関係を愚かにすると痛い目にあいかねません。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、著名人の著作権で注意すべきポイントについて、知財関係に精通する浅川有三弁護士に解説していただきました。


(2)肖像権等(本人の権利)について

 

実在の人物の姿を利用する場合には、絵画等の創作者ではなく、描かれた本人の権利を侵害していないかも検討する必要があります。

 

描かれた本人の権利、としてまずうかぶのが肖像権です。

 

肖像権とは、自らの容姿などを勝手に写真や絵画、彫刻などにされたり、利用されたりしない権利のことをいいます。日本では、法律で明確に決められているわけではありませんが、裁判上、人格権の一つとして、法的保護に値する権利として認められています。

 

そのため、原則として本人の許可がない限り、勝手に像を作成することは肖像権侵害になり得ますが、肖像権は人格権の一つですから、本人が亡くなると肖像権も消滅すると考えられています。

 

従いまして、本件のように過去の偉人の容姿そのものを利用することについては、肖像権侵害とはなりません。

 

次に、徳川家康のような有名人の姿を使用する場合に考えられる権利としては、パブリシティ権があります。

 

パブリシティ権とは、有名人の氏名や容姿など、顧客吸引力等の商業的価値を有する場合に、この商業的価値(パブリシティ価値)を本人が独占できる権利のことをいいます。簡単に言うと、他人の容姿を使って、勝手にお金もうけをしてはいけないよ、ということです。比較的新しい権利であり、日本では明文で規定されてはおらず、こちらも解釈上認められているにすぎません。

 

ここで問題となるのが、パブリシティ権の存続期間です。

 

この点、パブリシティ権を財産権の一つと考えると、譲渡も可能ですし本人の死後も存続すると考えられます。パブリシティ権を明文で規定しているアメリカのケンタッキー州では、死後50年存続すると定めており、またドイツでは、裁判所が死後10年存続すると判示しました。

 

また、ニューヨークでは生前のパブリシティ権のほか、死後のパブリシティ権を別に定め、死後のパブリシティ権は純粋な財産権であるとしています。

 

これに対し、日本では最高裁が、パブリシティ権を人格権に由来するものであると判示していますが、まだパブリシティ権について明言した裁判例はそれほど多くなく、また人格権の一つであるとした裁判例がある一方、財産権の一部としたものもあり、明確に死後の存続や譲渡可能性について判断がなされているわけではありません。

 

パブリシティ権の性質上、譲渡可能と判断されることも十分あり得ますので、本人の死後一定期間は、権利者がいるかどうか確認をした方が、リスクは避けられるでしょう。

知らずに権利を侵害しないために

上記のとおり、実在の人物の容姿を利用する場合、参考とする絵画などの著作権侵害の他、描かれた本人の権利についても、侵害しないよう注意する必要があります。

 

相談者のケースのように、徳川家康という既に亡くなっている人物の場合、その人自身の容姿であれば、肖像検討の問題になりませんが、例えば「ドラマで俳優の◯◯さんが演じた徳川家康が人気だったから、◯◯さんの徳川家康の写真を参考にしよう」と考えた場合、俳優の◯◯さんの肖像権やパブリシティ権を侵害してしまった、ということは十分に考えられます。

 

そこでまず、実在の人物の容姿を利用する場合には

 

①参考とする写真や絵画などの著作権が存続しているか

②著作権が存続している場合、その著作権を侵害していないか

 

を検討した上で、さらに

 

③参考にした写真や絵画の人物は誰か

④その人物の肖像権、パブリシティ権を侵害していないか

 

という点も検討すべきです。

 

なお、今回は設問から離れるため触れませんでしたが、例えば「家康をモチーフにしたまんじゅう、家康まんじゅうを作って販売する」というようなケースの場合には、これまで検討した問題の他、「家康まんじゅうが商標登録されていないか」という点も問題となりますので、制作物の形態によっては、商標権の調査も必要となります。

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