出生率「1.26」出生数「80万人割れ」いずれも“過去最低”で問われる少子化対策…「子育てのお金」を支える“8つの制度”と問題点

出生率「1.26」出生数「80万人割れ」いずれも“過去最低”で問われる少子化対策…「子育てのお金」を支える“8つの制度”と問題点
(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年6月2日、厚生労働省は、2022年の「人口動態統計」を公表しました。これによると、2022年の合計特殊出生率が1.26、出生数が77万747人と、統計史上初めて80万人を下回りました。折しも、政府は児童手当の拡充等の政策を打ち出していますが、財源の問題も含め、前途は多難です。本記事では、子育てを「お金」の面で支える8つの制度を紹介したうえで、わが国の少子化対策の課題を検証します。

日本の「少子化対策」の3つの課題

以上が、子育てに関する「お金」の面での主な公的サポートの制度です。しかし、わが国の少子化対策については、以前から、主に以下の3つの課題が指摘されています。

 

【日本の少子化対策の課題】

1.「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重している

2. 育児と仕事を両立できる環境の整備が不十分である

3. 所得が減っているのに教育費の負担が増大している

 

◆1. 「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重している

まず、「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重しているということが指摘されています。

 

この点に関連して、「児童手当」については、中学生までしか受けられない点、所得制限がある点が批判されてきました。しかし、前述のように、対象を高校生まで拡大し、所得制限を撤廃する方向が示されています。

 

◆2. 育児と仕事を両立できる環境の整備の整備が不十分である

次に、育児と仕事を両立できる環境の整備が不十分であるとの指摘があります。

 

今日では夫婦共働きが当たり前になっています。その背景には、いわゆる「女性の社会進出」もありますが、共働きをしないと生計が維持できなくなっているという要因も大きいとみられます。

 

ところが、日本では依然として、育児の負担が母親に集中しがちです。男性の育児休業取得率も著しく低い状態です。

 

男性(父親)も女性(母親)もともに、育児と仕事を無理なく両立できるようにする環境の整備は急務です。

 

また、現状、個人事業主・フリーランスの人には、サラリーマン(会社員)の「出産手当金」「育児休業給付金」に相当する制度がありません。制度の構築が急務であるといえます。

 

◆3. 所得が減っているのに教育費の負担が増大している

最後に、実質所得が減少しているのに、教育費の負担は高騰し続けていることです。

 

物価高や増税が重なり、しかも、年金不安の問題もあります。子どもを産み、育てる以前に「自分のことで精いっぱい」という人が確実に増えています。

 

そんななかで、教育費が高騰しています。私立大学の授業料の平均値は、2001年の年799,973円だったのが、2021年には年間930,943円に達しています。16%以上も増えているということです(文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査」)。

 

授業料の高騰の抑制や、給付型の奨学金の拡充等の施策が待たれます。

 

このように、わが国には出産・子育てをサポートする各種の制度がありますが、それらが上記の3つの問題点を解決するのに十分に機能していないという実情があります。

 

少子化対策には、出産・子育てに対する総合的なサポートが必要です。それぞれの制度を拡充させることと、有機的にかみ合わせて機能させることの両方のアプローチが求められています。

 

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