保険会社の態度が悪いと感じる理由
保険会社は被害者に支払う賠償額を抑えたいので、治療終了や職場復帰の時期を繰り返し尋ねたり、治療終了や職場復帰を要求したりします。
被害者としては通院や休業について十分な理由があるのですが、保険会社からの質問や要求等を繰り返し受けることで「プレッシャーをかけられている。」と感じるようになります。
また、賠償額が確定するのは、治療が終了したあとです。そのため、保険会社は、示談が成立する前の治療中の段階で治療費や休業損害等の一部を支払う(これを「内払い」と言います。)場合、内払いの額が本来賠償すべき額を超えないよう慎重にならざるをえません。
その結果、治療費や休業損害の内払いに応じない、打ち切るといった態度に出ることになります。
被害者は「保険会社が治療中からしっかりサポートしてくれる。」という期待を持っていることが多いので、この期待に保険会社が応えないことで「態度が悪い」と感じるようになるのです。
もちろん、保険会社にもいろんな担当者がいますので、交渉を有利に進める目的で被害者に対して高圧的な態度に出ることで優位な立場に立とうとする人や、自分の業務量を減らすために雑な対応をする人など、まさしく「態度の悪い」担当者は残念ながら一定数います。
被害者は担当者を選べませんので、こういった担当者に運悪く当たってしまうこともあります。
ユキナさんへの保険会社の対応は適切だったか
これまでのご説明を踏まえて、ユキナさんに対する保険会社の姿勢に問題がなかったか検討します。
まず、通院のための交通費について、保険会社は「後々分かりづらくなるからひとまず被害者負担で。」と答えたとのことです。
医療機関に通うために交通費(通院交通費)は認められやすい損害で、電車やバスのルートを調べれば運賃の額は容易に分かりますし、タクシーであれば領収書を見れば額が明らかです。通院日も、医療機関が保険会社へ提出する診療報酬明細書に記載されていることがほとんどです。
したがって、「後々分かりづらくなる」という理由は説得的でなく、単に内払いの手間や示談交渉の際に既払額を計算しなければならなくなるのを嫌っただけの可能性があります。
確かに内払いは保険会社によるサービスで強制的なものではないですが、もし保険会社が手間を嫌って内払いの拒否をしていたのであれば、予想外の支出や収入減という経済的な負担に襲われている被害者への対応として不適切と言わざるをえないでしょう。