(※写真はイメージです/PIXTA)

地方都市の過疎化が進む一方で、東京への人口流入が続いています。東京は便利で楽しい場所ですが、一極集中が生み出す弊害も少なくありません。問題点とその解消方法について、経済評論家の塚崎公義氏が提案します。

東京一極集中は「コスト高」

人はなぜ、東京に集まるのでしょうか。それは、便利だし楽しいからでしょう。しかし、東京に住むにはコストがかかります。メリットがコストを上回るならば東京に住むし、そうでなければ住まない、というわけですね。

 

問題なのは「各人が他人に与えている迷惑」はコストの計算に入っていない、ということです。東京に住む人が通勤電車に乗れば、混雑を助長しいて周囲に迷惑がかかります。車で通勤すれば、渋滞と大気汚染を悪化させます。自分自身も混雑や渋滞等に悩まされるわけですから、お互い様ではありますが「お互いが公害を出し合っている」ような状態なのです。

 

隣人が東京に住むメリットが、コストを少ししか上回らないなら、あなたが受けている迷惑のことまで考えれば、隣人が東京から出ていくほうが日本国全体のためなのです。公害をまき散らす企業が、わずかしかメリットを生み出せないなら、操業を停止したほうが日本全体のためになるのと同じです。

 

普段は意識していないかもしれませんが、じつは東京一極集中には渋滞や混雑以外の問題もあります。それは、防災対策の困難さです。

 

東日本大震災のとき、帰宅難民が大勢出たことを覚えている方も多いでしょう。しかし、人が歩道を埋め尽くしているときにどこかで火災が発生したら、人の流れがどうなるか想像してみてください。そもそも消防自動車が火災現場に到着できるのでしょうか。このように、非常に大きな不安もあります。

 

東京に住む人を減らしておけば、帰宅難民もゆうゆうと歩けるでしょうし、消防車の活動も容易になるでしょう。コンビニの食品が売り切れたって、容易に補充できるでしょう。東京に人が大勢住んでいることは、災害時にお互いの安全を脅かすという意味でも「公害」なのです。

操業をやめるべき「公害企業」とは

上に、公害企業の操業停止のたとえ話を記しましたが、すべての公害企業が操業をやめるべきかというと、そんなことはありません。莫大な利益を稼いでいるけれども、多少の騒音が伴うといった企業なら、騒音を訴える被害者に罰金を払って納得してもらい、操業を続けたほうが日本全体の利益になりますから。

 

同様に、東京に住むことで大きなメリットを享受している人は、東京在住のコストが上がっても住み続けたいと思うでしょうから、出ていく必要はありません。満員電車を混雑させている分の迷惑料を払っても東京に住んでいたいなら、そうすればよいのです。

 

そのためには、東京に住むための税金を徴収すればよいのです。税金を払っても住み続けたい人は住み続け、税金を払うくらいなら出ていくという人は、出ていけばいいのです。

 

税額をどれくらいに設定するかは、東京の人口をどれくらい減らしたいかで決めればよいでしょう。財政再建をしたい財務省は高めに要求するかもしれませんが(笑)。

東京一律ではないはず

東京一極集中の是正という観点から考えると、都心に住む人と郊外に住む人の税金を同額にするわけにいかないでしょうし、近隣県から東京に通勤通学する人は無税というわけにもいかないでしょう。

 

人口密集地に住む人から高い税をとるとするなら、固定資産税がよいでしょう。都心に住みたい人は高い税を払っても住めばいいし、高い税が嫌なら郊外に住めばいいし、安い税も嫌ならば田舎に引っ越せばよいのです。

 

ここまで住民のことを考えて来ましたが、東京に住む人を減らすための別の方法として、東京で働く人を減らすことも考えましょう。つまり、都心の企業を郊外に、郊外の企業を地方に、移転させるのです。そのためにも、固定資産税の増税は有効です。

 

都心の不動産価格の高い所にオフィスを構えることで大いに利益が得られるなら、高い税金を支払っても都心に残ればよいですし、それほど利益が稼げないなら、郊外か地方に移転すればよいでしょう。

 

企業単位で動く必要はありません。営業部門は都心に残り、システム部門や経理や人事は郊外に移る、ということも可能だからです。

誰がガマンすべきなのか

上記のように、高い税金を払っても東京に残りたい人だけが残る、ということになると、「東京にいてもたいして稼げない人や企業は出ていけ」ということになるわけですが、それは仕方のないことです。

 

「東京一極集中が問題だから東京に暮らす人を減らそう」というわけですから、誰かに出ていってもらわなくてはなりません。そうであれば、大いに稼げる人や企業が出ていくよりは、ほかの人が出ていくほうが日本全体のためですね。

金持ちから税をとる

財政赤字が巨額なので、増税の必要性を訴える人は多いです。どうせ増税するならば、消費税のように痛税感が強く消費を抑制しかねない税よりも、東京一極集中を是正できる固定資産税を増税するほうがはるかにマシでしょう。

 

もうひとつ、貧富の格差の是正という観点も重要です。「金持ちから税を取ろう」というと、高額所得者の所得税率を引き上げることを考える人が多いのですが、都内の豪邸に住んで巨額の銀行預金をもちながら、年金暮らしなので所得税をほとんど払っていない高齢者からも税をとるべきでしょう。そちらが本当の金持ちですから。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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