年金を受給しながら働くと、年金が減額されるといわれることがあります。しかし、これは厳密には不正確であり、減額される場合とされない場合があります。また、むしろ働いた方が得をする場合もあります。年金制度に詳しい社会保険労務士の小泉正典氏が監修した『60歳からの得する! 年金 働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-24年最新版』(ART NEXT)からわかりやすく解説します。
働きながら老齢厚生年金をもらうなら年金減額基準のボーダーラインに注意
◆48万円を超えると一部または全額が支給停止
老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働く人は、年金と給料両方の合計額が一定の基準を超えると、年金額が減額されてしまいます。
2023年度は、名目賃金の変動によって支給停止調整額の改定があったため、2022年度より1万円多い48万円が年金カットのボーダーラインです。この金額は、48万円を基準に、名目賃金の変動に応じて年度ごとに改定されます。
この制度は、60代前半に受給する「特別支給の老齢厚生年金」と給料の合計額も対象です。そして、65歳以降も厚生年金に加入して働く限り70歳までずっと続きます。
また、繰り下げ待機中で、実際には年金をもらっていない人も要注意です。在職老齢年金は、実際に年金を受給していなくても減額対象です。
しかも、このときカットされた分の年金は、繰り下げ受給の増額対象になりません。仮に全額支給停止になると、繰り下げても老齢厚生年金はまったく増額しなくなります。
ボーダーラインを超えそうな人は、65歳以降は、フリーランスや業務委託契約といった、厚生年金に加入しない働き方にするなど、年金カットを回避する対策を検討したほうがいいでしょう。
社会保険労務士小泉事務所
代表・特定社会保険労務士
1971年生まれ。栃木県出身。明星大学人文学部経済学科卒業。社会保険労務士小泉事務所代表。一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。
専門分野は、労働・社会保険制度全般、および社員がイキイキと働きやすい職場づくりのコンサルティング。監修書に『知らなきゃ大損!あなたを助ける 社会保障一覧表 2023年度版』(アントレックス)、『60歳からの「届け出」だけでお金がもらえる本』『知って得する!60歳からの「届け出」だけでもらえるお金』『60歳からの「届け出」だけでもらえるお金』『知った人から得をする! 60歳からの「届け出」だけでもらえるお金 最新版』(すべて宝島社)、『最新版 図解「届け出」だけでお金がもらえる制度一覧』(三笠書房)があるほか、メディア出演、講演、セミナーなども多数。
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