継続雇用で60歳時点より「25%以上」下がったら受け取れる給付金
定年後、60歳を過ぎて継続雇用で働く場合、給料が減額となることがあります。
継続雇用の賃金が60歳時点と比べて25%以上下がった人は、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が受けられます。
対象は、60歳以上65歳未満で、今まで5年以上雇用保険に加入し、引き続き雇用保険に加入している人です。支給額は月ごとの賃金の低下率に応じて支給されます。
60歳時点で雇用保険の加入期間が5年未満の人も、継続して働くうちに5年に達し、その時点で給料が25%以上下がっていたら、65歳まで給付が受けられます。
支給額は、60歳以降の賃金額の最大15%で、賃金の「低下率」に応じて変動します。ただし、支給額が2,125円を超えないと支給されません。
新しい就職先で給料が「25%以上」下がった人にも同様の制度あり
継続雇用の道を選ばずに、新たな就職先を見つけた人には「高年齢再就職給付金」があります。
再就職をしたときに、失業給付の基本手当が100日以上残った状態で、再就職先での給料が前の会社の25%以上下がった場合、60歳以降の賃金額の最大15%給付されます。
支給期間は、基本手当の残日数が100日以上200日未満の人は1年、200日以上の人は2年です。期間内でも65歳になると終了します。
気をつけたいのは、再就職の年齢です。離職は59歳でも構いませんが、再就職が60歳以降でないと給付対象にはなりません。
また、再就職手当との併給はできません。
高齢者雇用継続基本給付金と再就職給付金の違いは、[図表1]の通りです。
年金額との「調整」に注意
高齢者雇用継続基本給付金・再就職給付金を受給する場合は、老齢厚生年金の額が減額されるので、注意が必要です([図表2]参照)。
老齢厚生年金が何%減額されるかは、給料の額が60歳時点と比べて何%まで減ったかに応じて決まります。以下の通りです。
【年金額の調整(給料の額が60歳時点と比べ何%になったかによる)】
・61%以下:老齢厚生年金が6%減額
・61%超~75%未満:低下率に応じ、老齢厚生年金が5.48%~0.35%減額
◆60歳以降継続雇用で働くAさん(1962年生まれ・61歳)の場合
【Aさんのケース】
・60歳までの賃金:月額30万円
・継続雇用後の賃金:月額18万円(60歳時の60%)
・64歳から特別支給の老齢厚生年金を受給:月額9万円
Aさんは給料が60歳時点の60%になったので、現在の給料の標準報酬月額の15%・2万7,000円の「高年齢雇用継続基本給付金」を毎月受け取れます。
一方で、Aさんは64歳で「特別支給の老齢厚生年金」月額9万円を受給できます。ただし、高年齢雇用継続基本給付金との調整により、毎月の年金額は、給与の標準報酬月額(本件では18万円)の6%の1万800円だけ減額され、7万9,200円となります。
給料の額と高年齢雇用継続給付金と年金額を合計すると、28万6,200円となります。受給しなかった場合と比べ、1万6,200円プラスになる計算です。
減額されるのは、高年齢雇用継続基本給付金を受給している間のみです。
小泉 正典
社会保険労務士小泉事務所
代表・特定社会保険労務士