65歳と64歳では失業給付に「大きな差」
60歳以降に退職して「失業給付」を受けるときは、年金についても併せて考える必要があります。なぜなら、原則として失業給付の基本手当と年金は併給できないからです。
◆特別給付の老齢厚生年金の受給者
60~64歳で、「特別給付の老齢厚生年金」(特老厚)を受給している人は、失業給付を受けると、基本手当の給付が終わるまで特老厚は支給停止になります([図表1]参照)。
◆65歳以上の年金受給者
一方、65歳以上の人は、失業給付の種類が「高年齢求職者給付金」(最大34万円の一時金)に切り替わります。これは年金との併給が可能であり、受け取っても年金が停止することはありません([図表2]参照)。
◆「60歳~64歳で退職」と「65歳になってから退職」とでは大違い
64歳までに退職した人は、失業給付として総額で最大172万2,480円(基本日額の上限7,177円×240日)の給付が受けられます。また、その後老齢年金の受給が始まっても老齢厚生年金が支給停止になりません。つまり、年金と基本手当が併給できることになります。
ところが、65歳になると失業給付は「高齢者求職者給付金」に切り替わり、給付は最大でも約34万円です。もらえる金額が約138万円も減ることになります。
「65歳の誕生日直前」に退職すると失業給付が約138万円増えることも!
基本手当と年金を同時に受けたいという人は、このしくみを利用して、65歳になる前々日までに退職し、65歳の誕生日の前日以降にハローワークで求職申し込みを行う手もあります([図表3]参照)。
そうすると、失業給付は基本手当が支給されます。すぐに65歳になっても基本手当のまま、年金の支給停止や減額もありません。
ただし、会社によっては定年退職前の退職の場合に退職金がもらえなくなったり、減額されたりする場合があるので、事前に確認しておきましょう。
また、自己都合で辞めた場合は、勤続20年以上の人も基本手当の支給日数が150日(最大107万6,550円)になるのでよく検討しましょう。
小泉 正典
社会保険労務士小泉事務所
代表・特定社会保険労務士