「修繕積立金」が慢性的に不足…
自然災害、特に大地震が起きた場合、マンションの基本的な構造部分が損壊する可能性があります。
その場合、修築の費用は「修繕積立金」から賄うことが考えられます。しかし、データによれば、修繕積立金で賄いきれないケースが非常に多いことが想定されます。
どういうことかというと、国土交通省「平成30年(2018年)度マンション総合調査」の結果によると、修繕積立金が計画よりも不足していると回答した管理組合が34.8%、実に3分の1を超えているのです(同調査報告書P.9参照)。
このデータは2018年時点のものであり、昨今はいわゆる「コストプッシュインフレ」のせいで建築資材が高騰していることを考慮すれば、修繕積立金が不足している管理組合の割合は34.8%よりもさらに高くなることが想定されます。
また、修繕積立金の算定の基礎となる「長期修繕計画」は、基本的には、経年劣化をカバーする見地から立てられるものです。そもそも、大規模地震の被害を想定したものではありません。
このことからすれば、もしも、マンションが大地震に見舞われた場合、修繕積立金では到底賄えないケースは非常に多くなることが想定されます。
修繕積立金の不足を補うには「地震保険」
そこで、マンションが大地震で損壊した場合の修繕費用の不足をカバーする手段として考えられるのが「地震保険」を「共用部分」にかけることです。
マンションは、入居者が居住する「専有部分」と、エントランス、ロビー、廊下、階段、エレベーター等の「共用部分」とに分かれます。
このうち、「専有部分」については、入居者が個別に地震保険に加入できます(厳密には、火災保険の特約として付保することになります)。
これに対し、共用部分は入居者により組織される「管理組合」の所有・管理に属するので、管理組合名義で別途、保険加入する必要があるのです。
地震保険は、地震保険の保険金額の上限は、火災保険で設定されている保険金額の50%です。
損害を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に分け、それらの段階ごとに受け取れる額が設定されています(【図表1】)。