(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今、日本全国で自然災害が相次いでいます。マンションは戸建て住宅等と構造が異なるうえ、多数の住戸があるので、防災だけでなく、被災時の事後対応にも特段の準備・心構えが必要です。その前提となる「被災区分」について、旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所副所長の大木祐悟氏とNPO法人かながわ311ネットワーク代表の伊藤朋子氏が著書『災害が来た! どうするマンション』(ロギカ書房)から解説します。

◆全部滅失と判断する場合

次に「全部滅失」です。建物が全壊した場合はもちろん全部滅失ですが、たとえば建物の特定の階がすべて潰れてしまったような状態 は、すでに建物としての機能を失っているため全部滅失とみなされて いるようです。

 

[写真2]

 

[写真2]は、4階建ての建物の1階部分がすべて潰れてしまっているので、建物としての機能が失われたと判断され、「全部滅失」とされていたようです。

 

「大規模一部滅失」か「全部滅失」かの判断も、不動産鑑定士のほか弁護士や一級建築士等の意見も参考にして、管理組合で判断をすることになります。

 

建物の被災度合いを判断するうえでのその他の注意点

災害で被災した建物の被災度合いを考えるときに、とてもややこしいことがもう一つあります。それは、目的ごとに被災状況について別々の判断基準があることです。

 

「目的により別々の判断基準がある」とは、どういうことでしょうか。 基本的には次の 4つの場面が考えられます。

 

大規模災害の際の被災度合いの判定を受ける場面  

(1)応急危険度判定

(2)罹災証明の交付

(3)地震保険の保険料を支払い

(4)被災マンションの復旧を考えるときの法律上の区分 (前述のとおり)

 

参考までに、(1)から(3)の内容についても簡単に説明をいたします。

 

◆(1)応急危険度判定

「応急危険度判定」とは、大地震で被災した建物について、余震などで倒壊するリスクを応急的に判断するためのもので、応急危険度判定士が判断します。

 

「赤」「貴」「青」の紙を貼って判断するものですが、その家にとどまることが安全か危険かを一時的に判断するための材料に過ぎません。

 

◆(2)罹災証明

次に罹災証明ですが、住居の被害の程度を証明する公的な書類となります。大規模災害で住居が被害をうけたときに被災者が公的支援を受けるときに必要なもので、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」 の 4つに分類されます。

 

研修を受けた調査員(市町村の職員等)が調査をしたうえで判定をします[図表2]。

 

[図表2]罹災証明における被害の区分

 

◆(3)地震保険における区分

地震保険は、地震や地震による津波、火山の噴火等の補償をする保険ですが、地震保険料を支払う際の根拠とするために、日本損害保険協会の認定試験に合格した鑑定人が判定をします。

 

被災区分は罹災証明上の被災区分と似ていますが、建物の損壊状態についての判断は異 なります。具体的な区分と保証料率は[図表3]のとおりです。 なお、被災度の判定について不満があるときは、消費者向けの窓口で相談を受けているようです。

 

[図表3]地震保険の被災区分と保証料率
 

以上で説明した事項について、それぞれの「目的」と「被災区分の 判定者」について、[図表4]でまとめました。

 

[図表4]それぞれの目的と判定者
 

この中で、「罹災証明」と「地震保険」及び「法律上の区分」では[図表5]で示すように似たような用語が使われていますが、似た用語 で表現がされていても同じ状態を意味するとは限らないことに注意が 必要です。

[図表5]罹災証明と地震保険と法律上の手続きにおける用語]

 

 

大木祐悟

旭化成不動産 レジデンスマンション建替え研究所 副所長

 

伊藤朋子

NPO法人かながわ311ネットワーク 代表

災害が来た! どうするマンション

災害が来た! どうするマンション

大木 祐悟 伊藤 朋子

ロギカ書房

関東大震災から100年! 電気・ガス・水道、ゴミ・排泄物、病人、備蓄、情報・避難、防災組織、・防災マニュアル、建替え・・・。 マンション災害の特徴を知り、準備、そして被災から復興への道筋を検討する。 【内容】 …

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