「地方で起業」と「都市部で起業」はなにが違う?
都市部での起業・創業・開業とは
コロナ禍以前は、都市部に多くの企業が集中していました。そのため、「起業するなら都市部へ!」というイメージがあるでしょう。
当時は、インターネットも現在ほど発展しておらず業界の最新情報や動向などは人づてや競合他社などに聞いたりしながら、共存していた背景があります。そのため、多くの起業家も都市部へ集まっていました。
しかし、近年は情報化社会。インターネットがあればどこでも、だれとでも繋がれるので情報の偏りが無くなってきました。起業・創業・開業の場所が都心ではなく、地方が選ばれることも珍しくないのです。
地方での起業・創業・開業とは
地方では過疎化や高齢化がどんどん進んでいます。そのため、地方では地方創生・地域活性化の一環として「起業家の誘致・支援」をしています。新たな雇用が生まれるだけでなく、人口流出も抑えられるからです。
<地方起業のメリット>
・起業に必要な費用や固定費が抑えられる
最大の利点はコストの削減に大きく貢献することです。
・人件費
・自治体からの補助金・助成金の提供
・課税免除など
地方のほうが地代・平均賃金が安いので、オフィスの家賃だけでなく自宅の家賃や人件費といった費用が抑えられます。起業したのちは、軌道に乗るまで時間を要することが多いでしょう。資金繰りには多くの経営者が苦労するので、初めての起業にもおすすめといえるでしょう。
・補助金・助成金制度を活用できる
地方創生・地域活性化の一環として「起業家の誘致・支援」をしています。大きく分けると国が提供している支援策と、自治体で独自で提供してる支援策の2つがあります。
【国が主導で進めている支援策】
・起業支援金制度
・移住支援金制度
【自治体独自の支援策の例】
・家賃の補助
・新商品の開発費用の補助
・空き家・空き店舗などを活用した開業の経費補助
・創業時の融資の金利の補助
・競合が少ない
地方は都会と比べ企業の数が少ないため、競合が少ないといえます。もちろんインターネットを活用したサービス等であれば、特に関係が無いですが飲食店やサービス業といった、その土地に根差して、その土地に住む方々と関係を築くような事業であれば、創業当初からお客さんが訪れてくれやすいでしょう。
・地元企業との協力が可能
都市部以上に、地方では人間関係が密になるため企業同士でも協力し合うことが多いです。
また、地元の経営者の方には地元愛や地域活性化という視点を持たれている方も多いので、協力関係が築きやすいでしょう。
・地方のブランドイメージを活用できる
たとえば、地ビールなどはその地域のブランドイメージを活用しているといえます。そのほか、日本酒やお菓子なども、綺麗な水やその土地の特産物などを彷彿とさせるので、競合他社に対して差別化の要素となり、商品に興味を持ってくれるきっかけになるでしょう。
<地方起業のデメリット>
・市場規模が小さい
地方で唯一の事業を開始した場合、そのエリア内でシェアほぼ独占できても、市場が小さく会社として成り立たなくなる可能性も出てきます。たとえば、田舎の過疎化したエリアでネイルサロンを開業する方はいないでしょう。
インターネットを活用した起業であればその点はあまり関係ないです。
・人材の採用や確保が難しい
地方では人口が都市部に比べ少ないため、売上が順調に伸びても人材の採用で行き詰まることもしばしば。また、専門的な知識を持った人材も都市部に集まる傾向があるので、その点は事業の内容や特徴を踏まえ、起業する場所選びが必要になります。
・会社の信頼・信用度
会社の信頼・信用というのは、一般的に「上場しているか」であったり「資本金の額」で判断されますが、本社の住所などもみられる可能性はあります。
やはり、買い手側の目線に立つと安定した、人気のある企業から買いたいというのが人間の心理でしょう。現在はその傾向も薄れてきていると思いますが、頭の片隅には入れておくといいかもしれません。
都市部で起業の薄れつつあるメリット
起業といえば都市部のようなイメージがある方も多いでしょうが、都道府県別の開業率ではその傾向はありません。
[図表]は、第一生命経済研究所が発表した都道府県別の開業率を示したもので、東京都などの三大都市圏を抑えて、沖縄県が開業率トップとなっています。
地方での開業率が高い理由は、上述したとおり起業や創業への支援策が手厚いことが挙げられるでしょう(※ただし、都市部ではそもそもの企業数が多いため開業率が低く見える傾向もある)。
開業率とは、ある特定の期間において、「〔1〕新規に開設された事業所(又は企業)を年平均にならした数」の「〔2〕期首において既に存在していた事業所(又は企業)」に対する割合
総務省「事業所・企業統計調査」に基づく開業率・廃業率の計算方法