「貸借対照表」から一目で会社の「資金繰り」「経営状態の安全性・危険性」を見抜けるポイント【人気簿記講師(税理士)が解説】

「貸借対照表」から一目で会社の「資金繰り」「経営状態の安全性・危険性」を見抜けるポイント【人気簿記講師(税理士)が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今日、会計の知識は、あらゆるビジネスパーソンにとって重要です。税理士・民間企業の経理担当役員で人気簿記講師でもある石川和男氏が、著書『決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」』(PHP研究所)から、決算書の「読むべき項目」や「順番」をわかりやすく解説します。今回は、貸借対照表から、企業の資金力や経営状態の安全性を見抜くポイントを解説します。

「当座比率」で当座資産と流動負債の比率を確認する

◆流動比率が100%以上でも安心できないワケ

流動資産が流動負債を1%でも上回っていれば、理論上は返済することができます。

 

では、なぜ150%以上もの流動比率が理想とされているのでしょうか? それは流動負債がほぼ100%、1年以内に返済する義務のある金額であるのに対し、流動資産には換金可能性が若干低いものも含まれているからです。

 

例えば、商品や製品などの棚卸資産は、販売を見込んで仕入れ、製造した品ですが、すべて必ず1年以内に販売できるとは限りません。

 

受取手形や売掛金が本当に期日までに受け取ることができるか、支払いと回収のタイミングも分かりません。

 

仮に、流動資産である売掛金1,000円、流動負債である買掛金600円なら、流動比率は167%で計算上は安全といえますが、売掛金の回収の前に買掛金の返済が来る可能性もあります。

 

そこで、より短期での支払能力を知るために、「流動資産」のなかでも、現金及び短期間で現金に換えることのできるスペシャルな資産である「当座資産」を確認します。

 

「当座資産」とは、「現金及び預金」「受取手形及び売掛金」「有価証券」を指します。より短期での支払能力を見るための指標が、当座資産と流動負債を対応させた「当座比率」です。

 

[図表7]当座比率とは

 

当座比率は業種、業態にもよりますが、120%以上なら優良水準、90%以上~119%以下なら安全水準、70%~89%以下なら改善の余地があるといわれています。

 

「当座比率」は、下記の算式で求めることができます。

 

当座比率=当座資産/流動負債×100

 

[図表1]の貸借対照表では、

 

現金及び預金+受取手形及び売掛金+有価証券/流動負債×100

 

158,577百万円+37,806百万円+7,791百万円/206,345百万円×100=98.9%

 

したがって、安全水準といえます。

 

流動比率や当座比率は、高ければ高いほど安全ですが、特に当座資産である現金及び預金が必要以上に多い場合は、ほかの問題が発生します。

 

それは現預金は新たな富を生まないという問題です。新たな富を生むためには、ほかの資産に投資する必要があります。

 

つまり、どこかが極端に偏っていてはダメで「流動資産」と「固定資産」のバランスが重要なのです。

 

流動資産は、お金もしくは1年以内に現金に換わる資産のため、比較的すぐに支払いの手段に使うことができます。

 

一方、固定資産は1年を超えてお金に換わるもの、もしくは長期使用目的のためお金に換える気のない資産です。言い換えると、固定資産は、会社が営業活動のために行っている屋台骨である設備投資と資金運用としての投資に充てられている資産です。

 

流動資産が多すぎると支払手段には事欠きませんが、会社の屋台骨が脆弱です。逆に固定資産が多すぎると、支払手段が少ないので資金繰りに不安が残ります。

 

経営分析は多面体です。したがって、色々な方向から分析する必要があるのです。

 

■Point!

「当座比率」で、超短期の資金繰りを確認せよ!

 

 

石川 和男

合格率No.1簿記講師・税理士・建設会社総務経理担当役員

 

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