着実に回復する「旅行需要」…過去最高を更新した「国内の観光名所」は?「GWの人出」から読み解く日本景気

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2023年5月10日)

着実に回復する「旅行需要」…過去最高を更新した「国内の観光名所」は?「GWの人出」から読み解く日本景気
(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年4月から5月にかけての「人出」は、前年に比べて全国的に増加しました。観光地の中には、過去最高や、コロナ禍前の水準を上回った例も少なくありません。今回は、“景気の予告信号灯”として「GWの人出」を紹介します。※本記事は、宅森昭吉氏(景気探検家・エコノミスト) の『note』を転載したものです。

2023年GW、観光地は前年度を上回る活況

~東海道新幹線の利用者数は「コロナ前の水準」をやや上回る。五稜郭タワーでは「4月の入場者数」として過去最高を記録

 

今年のGW(ゴールデンウィーク)の観光地は前年よりも多くの人出で賑わいました。JR東海のGW利用状況によると、4月28日~5月7日の10日間の東海道新幹線の利用者数は356.7万人で、前年比+26%の増加となりました。また、コロナ禍前の18年度GWの水準を+1%上回りました。なお、GWに先立つ4月(4月1日~4月25日の25日間)の東海道新幹線の利用者数は前年比+46%の増加になりました。但し18年度GW比は▲14%とまだ減少でした。それでも22年度全体での18年度比の▲26%から減少率が縮小していました。GWに18年度の水準を若干でも上回ったことは、コロナ禍からの回復で旅行需要が盛り上がったことを示唆すると言えるでしょう。

 

GW期間中(4月29日~5月7日)の日本航空グループの国内線の旅客数は93.0万人、前年比+11.7%でした。18年度GW比で+1.5%増とコロナ前を上回るまで回復しました。一方、Peachを合わせた全日空の国内線の旅客数は125.1万人、前年比+15.4%、18年度比は▲5.9%の減少でした。全体的に見た国内線の旅客数は概ねコロナ前水準近くまで回復したようです。

 

一方、国際線は日本航空が15.2万人、前年比+129.8%、18年度GW比▲33.0%でした。全日空は16.3万人、前年比+175.3%、18年度GW比▲36.6%でした。コロナ禍前との比較ではまだ7割に達していないものの、昨年に比べ着実に回復してきたことがわかりました。

 

観光地の人出に関する4月のデータからも足元の旅行需要の盛り上がりが実感できます。寒い冬の季節が終わった4月の函館・五稜郭タワーの利用客数は91,195人で、月次データとして過去最高を更新しました。今年1月~3月までの前年同月比は、昨年の同じ時期に発出されていたまん延防止等重点措置での閉鎖の影響が大きく出ていました。1月+63.3%、2月は昨年が1ヵ月すべて閉鎖中だった反動で計算不能、3月は+402.6%の増加でした。4月になり、ようやく前年同月比の判断が普通にできるようになったところで、+74.8%の大幅増になりました。

 

函館・五稜郭タワー利用客数

日本人、外国人ともに各地で旅行者が増加

~「外国人orインバウンド」関連・先行き判断DIは74.7…高水準だった3月の「全国旅行支援」関連DI

 

他の観光地も最近の動向は概ね上向き傾向にあります。その背景を、直近の景気ウォッチャー調査である3月調査でみましょう。「全国旅行支援」関連コメントDIを作ると、現状判断DIは66.7、先行き判断DIは65.3と高水準でした。さらにDIの水準が高いのは「外国人orインバウンド」関連コメントDIで、現状判断DIは71.9、先行き判断DIは74.7でした。75.0が全員「やや良くなる」と判断した時の数字です。

 

姫路城の入場者数は、まだ3月までしかわかりませんが、前年同月比は22年12月+26.4%、23年1月+66.5%、2月+66.7%、3月は+116.5%となっています。3月の入場者数は140,715人だったということです。

 

佐賀県の吉野ケ里歴史公園の前年同月比は22年12月▲30.6%と減少でしたが、今年の初めは前年の反動もあり23年1月+12.2%、2月+92.1%、3月は+27.9%と増加になっています。3月の入場者数は109,053人だったということです。4月の前年同月比は+11.2%となっています。

 

姫路城入場者数

一方、入園者数が減少した観光名所も…

~日本有数の観光地・金沢の中でも屈指の人気スポット、「兼六園」

 

4月の金沢・兼六園の入園者数は316,750人でしたが、前年同月比は▲3.1%と意外にもマイナスになってしまいました。日本人、外国人とも旅行をする人が増えているのに、日本有数の観光地である金沢の、観光名所の兼六園がなぜマイナスと一見、思ってしまいますが、今年は桜の開花が昨年に比べて早く、観桜期が前倒しになったことが原因です。

 

金沢市の今年の桜の開花は3月23日で平年よりも11日、去年よりも7日早く、1953年に統計を取り始めて以来、21年と並んで最も早くなりました。開花の直後は雨の降る日が多かったものの気温は平年をやや上回って推移したことで、満開は3月30日と平年より9日早く、昨年と比べても6日早い満開で、これまでで一番早かった21年の3月29日に次いで過去2番目の早さとなりました。

 

桜の影響もあり、3月の兼六園の入園者数は、482,810人で前年比+320.2%という非常に高い増加率になりました。

 

金沢・兼六園入場者数

 

 

※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

 

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