SNSで誹謗中傷をした相手に損害賠償請求をする流れ
SNSで誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求をする場合、いきなり損害賠償請求をすることができるケースは多くありません。ほとんどないといってもよいかもしれません。なぜなら、SNSで誹謗中傷をする相手は匿名であることが多く、アカウント情報のみでは誰であるのかがわからないためです。
インターネット上での誹謗中傷に対して損害賠償請求をするための主な流れは、次のとおりです。
1.SNSに発信者情報開示請求をする
はじめに、X(旧Twitter)やYouTubeなど誹謗中傷が行われたSNSなどの運営企業等に対して、発信者情報の開示請求を行います。この開示請求によって、次のステップで必要となるIPアドレスやタイムスタンプなどの情報開示を受けます。多くの場合、裁判所の手続きを利用して、発信者情報の開示を受けることとなります。
2.プロバイダに発信者情報開示請求をする
SNS運営企業等から発信者情報の開示を受けたら、そこで開示された情報をもとにプロバイダへ次の段階の発信者情報開示請求を行います。こちらも多くの場合、裁判所の手続きを利用します。ここまでを行って、ようやく発信者の氏名などの情報が判明します。ここまでの手続きにかかる期間は、ケースにより変動しますが、おおむね半年から1年ほどといわれています。
3.損害賠償請求をする
開示請求によって相手の身元が判明したら、そこでようやく損害賠償請求を行うことが可能となります。 相手に対して損害賠償請求を行い、相手が任意に支払わなければ訴訟手続きなどへと移行します。
SNSでの誹謗中傷で認められる損害賠償額の目安
SNS上での誹謗中傷に対して認められる損害賠償の金額は、その内容や頻度などによって異なります。あくまでもおおまかな目安となりますが、被害者が一般個人である場合で1万円から50万円程度、事業を営んでいる者や有名人などの場合で10万円から100万円程度といわれています。
SNSの誹謗中傷で損害賠償請求をするときの注意点
SNSで誹謗中傷をされた場合、相手に対して損害賠償請求をしたいと考えている場合には、次の点に注意しましょう。
スクリーンショットで証拠を保存する
誹謗中傷の投稿に対して損害賠償請求を検討している場合には、誹謗中傷された投稿のスクリーンショットを撮影するなどして証拠を保全しておきましょう。スクリーンショットを撮影する際には、次の項目が写るように撮影してください。
・投稿者名
・ユーザー名(X(旧Twitter)では、いわゆる「ツイッターID」。「@」から始まるもの)
・投稿された日時
・URL
投稿のスクリーンショットのみでは相手のアカウント名は掲載されても、ユーザー名の表示が不完全である可能性があります。そのため、投稿画面のほか、相手のプロフィール画面などのスクリーンショットも撮影しておくとよいでしょう。
できるだけ早く行動する
インターネット上での誹謗中傷に損害賠償請求をするためには、できるだけ早く行動しましょう。なぜなら、投稿から時間が経過するとSNS運営企業やプロバイダなどでのログ保存期間が過ぎてしまい、責任の追及が困難となってしまうためです。
ログの保存期間は企業などによって異なりますが、おおむね3ヵ月から6ヵ月程度としているといわれています。また、保存期間内であっても、相手が投稿を削除してしまえば損害賠償請求が困難となる可能性があります。そのため、誹謗中傷を受けたらできるだけ早く、可能であれば投稿された当日や翌日に弁護士へ相談するとよいでしょう。
早期に弁護士へ相談する
誹謗中傷への対応を無理に自分で行うことはおすすめしません。相手から一方的に誹謗中傷をされれば反論したくなるかとは思いますが、言い返したり先にダイレクトメールを送ったりすると、損害賠償請求において不利となる可能性があるためです。その場では無視を装ったうえで、すぐに弁護士へ相談しましょう。
まとめ
SNSで誹謗中傷を受けた際、損害賠償請求をするためにもっとも重要なポイントは、自分で応戦などはせず、できるだけすぐに弁護士へ相談することです。 トラブルの発生からすぐに弁護士へ相談することで解決までの期間が早まるほか、損害賠償請求が認められやすくなるでしょう。
参考文献
Authense 法律事務所