今回は、スラム化する「放置された古いマンション」について取り上げます。※本連載では、マンション管理士である日下部理絵氏の共著、『マンションの建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!』(学芸出版社)の中から一部を抜粋し、マンション建替えの基礎知識を解説します。

マンションが「スラム化」する背景とは?

現在、約600万戸あるマンションストック戸数のうち、100万戸超は築30年以上と言われています。この古くなってきた建物を放置していると、いずれ「スラム化」します。

 

スラム化すると、タイルの一部剥落、ベランダや廊下の手摺の落下、共用施設の破損・汚損、放置自転車の増加、管理費と修繕積立金の滞納等が起こり得ます。

 

この背景には、管理組合の財務状況、居住者間のコミュニティ形成が大きく関係し、管理組合にとって十数年に一度の大イベントと言える大規模修繕や小修繕、日常における建物・設備のメンテナンスが実施されないことが起因しています。

 

スラム化の特徴は、「高経年・高齢化で二つの老いが進行」「区分所有者の大半が居住せず、空室や賃貸化」「繁華街や都市部に立地し事務所や店舗が多い」「ワンルーム等の投資傾向が強い」等が挙げられます。

「負のスパイラル」は避けたいが・・・

一般的には、高経年のマンションほど、スラム化しやすいと言われていますが、築20年にも満たない建物でもスラム化の影は迫っています。郵便受けからチラシが溢れている、臭い・汚い・暗い、空き家、区分所有者の連絡先が不明等はまさにスラム化の始まりと言っても過言ではなく、下図のような負のスパイラルに陥ります。

 

管理や修繕をすべき時期に行わないと、陳腐化で資産価値も下がります。所有している限り、管理費や修繕積立金、固定資産税等の維持費はかかり、負の財産では相続側も困りものです。

 

また、避けて通れない「建替え」においても問題の先送りの傾向が強くなります。こうなる前に、長期修繕計画や修繕積立金を見直し、居住者間のコミュニティ形成、建物の劣化状況を把握しましょう。

 

[図表] スラム化への「負のスパイラル」

本連載は、2015年7月25日刊行の書籍『マンションの建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。なお、本書をテキストとして最新の内容等をわかりやすく解説する団体「一般社団法人マンション建替支援機構」が2016年10月に設立予定です。マンション建替えについて基礎知識を学びたい方、自身の大切な住まい(資産)について興味関心が高い方、必見の講座(認定制度等)の運営を予定しておりますので、どうぞご期待ください。

マンション建替えがわかる本  円滑化法改正でこう変わる!

マンション建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!

日下部 理絵

学芸出版社

旧耐震基準・高経年マンションが続々と建替えに直面するこれからの10年、「改正マンション建替え円滑化法」で何がどう変わるのか? マンション住民・管理組合、管理会社、不動産・建築関係者のための、マンション建替えの基礎…

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