今回は、マンション建替え中の「仮住まい」を準備する際のさまざまな留意点について説明します。※本連載では、マンション管理士である日下部理絵氏の共著、『マンションの建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!』(学芸出版社)の中から一部を抜粋し、マンション建替えの基礎知識を解説します。

入念な計画が必要な「仮住まい」の準備

建物の除却から新築まではおおよそ2年間かかります。その間は仮住まいをします。例えば、団地の建替えで敷地の空いた所に新築マンションを建て、そこに区分所有者が引越し、仮住まいが不要な事例もありますが、一般的には、仮住居を探すことになります。

 

仮住居は、通勤や通学等、住み慣れた生活圏を変えたくないという方が多いため、近隣で探す方が大半です。中には、近隣の空いている社員寮を借り上げる等の工夫で区分所有者の負担を軽減している事例もあります。

 

ただし、建替えが大規模の場合は、同時期に多くの世帯が仮住居を探すため、入念な計画が必要です。特に高齢者の場合、長く暮らした場所から移ることは、ご近所付き合いやかかりつけの病院への通院等、環境を変えたくないという意識がより強いので、優先して仮住居を探す配慮が重要です。

区分所有者同士が集まれる環境の準備

また、仮住まい期間中も区分所有者同士のコミュニティが継続できるような場所や機会を設け、物理的な距離だけではなく、人とのつながりが途切れない工夫をしましょう。

 

区分所有者同士が集まれる環境を用意することは、仮住まいへの引越しや建替え期間中の生活等への不安の軽減にもつながります。実際に、建替え前は知り合いではなかった高齢者達を同じ仮住居先にしたところ、建替え後にもつながる新たなコミュニティが生まれたという好事例もあります。

 

このように、仮住まいは、建替え後のコミュニティ形成にも大きな影響をもたらすでしょう。事業協力者や近隣の不動産屋、行政等の建替えに伴う仮住居の支援等も上手に活用して、できるだけ建替え前の環境に近い仮住居を準備する配慮をしましょう。

 

 

【Point】

建替えの検討の段階で、仮住まいにも配慮した提案をすることで建替え中の不安要素の軽減を図る!

本連載は、2015年7月25日刊行の書籍『マンションの建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。なお、本書をテキストとして最新の内容等をわかりやすく解説する団体「一般社団法人マンション建替支援機構」が2016年10月3日に設立されました。今後、マンション建替えについて基礎知識を学びたい方、自身の大切な住まい(資産)について興味関心が高い方、必見の講座(認定制度等)の運営を予定しておりますので、どうぞご期待ください。

マンション建替えがわかる本  円滑化法改正でこう変わる!

マンション建替えがわかる本 円滑化法改正でこう変わる!

日下部 理絵

学芸出版社

旧耐震基準・高経年マンションが続々と建替えに直面するこれからの10年、「改正マンション建替え円滑化法」で何がどう変わるのか? マンション住民・管理組合、管理会社、不動産・建築関係者のための、マンション建替えの基礎…

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