工場・倉庫は「5年程度」で賃料の下落が止まる!?
工場・倉庫の価値は、「空間がどれだけ使えるか」によって決まります。それ以外の要素、たとえば建物の古い、新しいはその資産価値にほとんど影響を与えません。
中古と比べた新築のメリットは、せいぜい「より客付けをしやすい」という程度のものにすぎず、賃料は築5年のものも築30年のものもほぼ同じと考えてよいでしょう。マンション、アパートは5年、10年と年数がたつのに比例して家賃が下落していきますが、工場・倉庫は5年程度で賃料の下落が止まって以降はずっと横ばいになります。
[図表1]経年劣化が家賃に及ぼす影響
このように、建物の経年劣化が賃料にマイナスの影響を及ぼすリスクがないことは、工場・倉庫投資の大きな強みの一つといえます(なお、オフィスビルまでとはいかないものの、景気の影響で賃料が上下動することは当然あり得ます)。
また、工場・倉庫を貸す場合は、入居したテナントが自ら建物にリノベーションを行うケースが多く、経年劣化するどころか逆にその外観や中身がどんどん立派なものになっていく可能性さえあります。ことに、物販店舗や飲食店が入居した場合には、テナントが自らの費用で全面的なリフォームを実施することが珍しくありません。
通常の不動産なら「維持費」で利回りが低くなるが…
不動産投資の利回りについては、「投資した費用に対してどれだけの賃料収入を得られるか」が指標とされることが少なくありません。たとえば、2000万円で購入したマンションで、年200万円の賃料収入を得られるのであれば、利回りは10%とみなされるわけです。
しかし、不動産投資の利益を正しく把握するためには「入ってくるもの(賃料収入)」だけでなく、複数年単位で「出ていくもの(コスト)」も考慮に入れなければなりません。すなわち、老朽化した設備を修繕するために必要となる維持費なども考えておかなければなりません。
したがって、不動産投資の利回りは、そうした複数年単位で「出て行くもの(コスト)」を差し引いた「実質生涯利回り」で計算することが重要になります。
[図表2]実質生涯利回り
とりわけ、一棟マンションに投資したような場合には、エレベーターなどの補修で数百万円単位のコストがかかることも珍しくありません。その結果、実質生涯利回りが大きく低下することもあり得るのです。