クレーマーよりも手ごわい「ゴーストペアレンツ」の実態…。40年以上のキャリアの中で出会ってきた“恐ろしい保護者たち”【教育のプロが解説】

クレーマーよりも手ごわい「ゴーストペアレンツ」の実態…。40年以上のキャリアの中で出会ってきた“恐ろしい保護者たち”【教育のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

自分は劣っている。自分を肯定できない…。そんな人には言えない苦悩やコンプレックスを子どもに与えているもの、それが「学力」である。上級学校に進学することが幸せにつながる?大学を出ればいい仕事に就いて成功する?本当に?未来を生きる子どもたちには、「学力」とは別次元の大切な「物差し」があることを伝えなければならない。今を生きる子どもたちとの「向き合い方」について、都立高校での校長歴・計14年、不登校の高校を改革し、退学者を半減させた経験を持つ、磯村元信氏の著書『さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革』(新評論)から一部抜粋して紹介する。

時代や社会の変化とともに保護者も変わる

ある時代から「モンスターペアレンツ」という言葉がよく使われるようになった。

 

今も昔も多くの保護者は協力的であるが、クレーム社会という風潮を背景に、学校への要望や苦情が確実に増えている。とくに課題集中校では、時代とともに保護者からの風当たりが強くなっている。

 

一方、連絡のとれない保護者や、学校からの連絡を拒絶する保護者への対応は困難を極めている。

 

クレーマーよりも手ごわい保護者を「ゴーストペアレンツ」と呼ぶことにした。

「うちの子を合格させた学校にも責任がある」

先生は偉い──本当にそうなのかは別として、世間ではそういうことにしておいたほうが家庭教育もうまくいくという時代背景があったころが懐かしい。

 

「うちの子が問題を起こしたら、学校で厳しく指導してください」

 

先にも述べたように、私が教員になった昭和五十年代は暴走族や校内暴力の全盛期であったが、それでも地域や家庭の教育力がまだ機能していたため、学校と家庭が一体となって生徒の問題行動に向きあうことができた。

 

「うちの子だけが悪いわけではない。親や友達にも責任があります」

 

ところが、二◯◯◯年代に入ると、保護者に我が子をかばうことが親の愛情であるかのような傾向が顕著になってきた。一例を挙げると、バイクで登校して特別指導になった生徒の父親が次のように言って我が子をかばい、本人のバイク登校を最後まで認めなかった。

 

「私が息子をバイクに乗せてきました。申し訳ありません。私の責任です」

 

「うちの子も悪いかもしれない。でも、学校や先生も悪い」

 

そして、近年では、生徒の問題行動は棚上げにして、学校や教員の不備を攻撃してくる「逆ギレタイプ」の保護者が多くなっている。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

数年前の事例では、授業妨害の特別指導に納得しない保護者が、「こんなことで指導する学校がおかしい。うちの子も悪いかもしれないが、うちの子を合格させた学校にも責任がある」と居直られたことがある。

 

このように、二一世紀の保護者の変化やその対応は厳しさを増している。ただ一つ、昔から変わらないものがある。それは、「なんとか高校だけは卒業して欲しい」という藁にもすがる親心である。そういう保護者に、問題行動の回数を根拠にして自主退学を迫ると「火に油を注ぐ」ことになる。

 

実は、困った生徒や保護者が一番困っているのだ。学校現場にいると、そのことを痛切に感じる。

保護者にも精神的不調のあるケースが多い

問題行動を繰り返す生徒のなかには、発達障害や精神障害などが影響している者が多く、教育的支援と医療的支援の両輪で対応する必要がある。また、保護者も同じく精神面における不調や障害を抱えていることが多く、親子で障害があることを受容できていないというケースも多い。

 

これからの生徒指導では、特別支援教育の考え方や発達障害などの医学的、医療的な知見に基づく「合理的配慮」が不可欠となる。

 

ただ、現行の規則やルールそれ自体が本当に正しいのか、という疑問もある。

 

世の中全体の法令遵守の組織統治が強まれば、当然マニュアルどおり、ルールどおりにならざるをえないわけだが、そうなると、個別の裁量やいい塩梅の「さじ加減」がやりづらくなる。

 

学校も例外ではなく、とくに生徒指導においては個別のさじ加減ができるかどうかで効果に雲泥の差がつくわけだが、そのさじ加減が現行のルールとぶつかりあってしまう。

 

こうした教員の葛藤を解消して、効果的な生徒指導を行うためにも、学校の規則やルールは絶対的なものではなく、対象や状況に応じて柔軟に変えられるという発想がますます重要になってくるだろう。

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