知的障害のある従業員が「7割」。あるメーカーの社長が「障害者の多数雇用」を決心したワケ

知的障害のある従業員が「7割」。あるメーカーの社長が「障害者の多数雇用」を決心したワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

自分は劣っている。自分を肯定できない…。そんな人には言えない苦悩やコンプレックスを子どもに与えているもの、それが「学力」である。未来を生きる子どもたちには、「学力」とは別次元の大切な「物差し」があることを伝えなければならない。今を生きる子どもたちとの「向き合い方」について、都立高校での校長歴・計14年、不登校の高校を改革し、退学者を半減させた経験を持つ、磯村元信氏の著書『さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革』(新評論)から一部抜粋して紹介。今回は、ある始業式と終業式で磯村氏が語ったスピーチの内容をお届けする。

クール・ジャパン(二学期始業式・二〇一一年九月)

元気で思ったことが自由にできる。それが、どれほど貴重なことか。そして、この日本で誰もが当たり前だと思っていることがどれほど素晴らしいことなのか。今日は、そういうお話をしたいと思います。

 

今日は、杖をついて学校に来ました。この夏休みに腰の手術をしました。背骨の神経が圧迫され、足がしびれて、長く歩くことができなくなってしまいました。ちょっとどこかへ行きたいなと思っても、痛みやしびれを考えると気が重くなってしまいます。

 

実は、入学式や始業式のとき、みなさんの前でこうして立つのも不安でした。朝の駅前や校門での挨拶も、立っていると足がしびれてきました。階段の上り下りもエレベーターを使う始末です。

 

普通に歩けること、それがどれほど素晴らしいことなのか、それを今実感しています。それまで当たり前にできたことができない辛さを噛みしめた夏休みでした。

 

そのなかで、これまでできなかったことができて、新たな発見のある夏でもありました。

 

その一つが、たくさんの本を読むことでした。入院前に、学校の図書館で十数冊の本を借りました。また、駅前の本屋さんで、気になる本を片っぱしから買いこみました。山になるほど本を病院に持ちこんで、朝から晩まで本を読んでいました。一番印象に残った本が『ワンピース』(尾田栄一郎、集英社、一九九七年より)です。

 

えっ、マンガばっかり読んだのと言われそうですが、持っていったマンガは『ワンピース』だけです。しかも、知りあいに頼んで、単行本を第一巻から四十数巻まで、全部病院に持ってきてもらったのです。実は、以前からワンピースを全部読んでみようとひそかに思っていました。

 

みなさんのほうがよく知っていると思いますが、主人公の麦わら帽子のルフィが海賊王を目指すこの物語は、史上初の二億冊以上の売り上げを誇る、ダントツ「人気ナンバー1」マンガです。海外でもブームを巻き起こし、熱狂的なファンが大勢いて、クール・ジャパン(カッコイイ日本)の代表的な作品になっています。

 

日本の若者を中心に、世界にも影響を与えるこのマンガに描かれているものは、「仲間を大切にする心」です。突拍子もない奇抜な絵や極端な構図は、時々意味不明で私にはついていけないところもありますが、偉大なる航路に浮かぶ奇妙な島々での冒険は、「自分がどんな苦難に遭遇しても、絶対に仲間を裏切らない。仲間を信じる」、そういう価値観で貫かれています。

 

昔よく使った言葉に「卑怯」というものがあります。私利私欲(自分だけ)のために人を裏切る、人を騙す、そういう人を「卑怯者」と呼びます。昔は「卑怯者」と呼ばれることが最大の屈辱でした。

 

今は、騙されるほうが悪い、人を信じるほうが悪い、そういう風潮さえあります。

次ページ最初は渋々だったが──
さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革

さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革

磯村 元信

新評論

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