●足元インバウンド需要の回復期待は高く、また東証は先月、資本コストなどの意識を企業に要請。
●日銀正副総裁の緩和継続姿勢に円安が進行、さらにバフェット氏は日本株への追加投資を示唆。
●決算では企業の今年度業績予想に加え東証の要請に応える姿勢や株主還元策も注目されよう。
足元インバウンド需要の回復期待は高く、また東証は先月、資本コストなどの意識を企業に要請
足元では、日本株の好材料がいくつか浮上しています。具体的には、①インバウンド(訪日外国人)需要の回復期待が高まっていること、②東京証券取引所(以下、東証)が3月31日、上場企業に対し、資本コストや株価を意識した経営などを要請したこと、③日銀正副総裁が4月10日の就任会見で金融緩和継続の姿勢を示したこと、④米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を示唆したこと、などが挙げられます(図表1)。
①は、昨年10月に新型コロナウイルスの水際対策が緩和されて以降、日本を訪れる外国人の数は増加傾向にあり、また、中国を対象とした水際対策が今月5日から緩和されたことで、さらなるインバウンド需要の回復期待が広がっています。②は、4月5日付レポートで詳細を解説した通り、継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たす取り組みが企業の間に広がれば、日本株の魅力は高まると思われます。
日銀正副総裁の緩和継続姿勢に円安が進行、さらにバフェット氏は日本株への追加投資を示唆
③についても、4月11日付レポートで詳しく解説していますが、就任会見で改めて緩和継続の姿勢が明確に示されたことにより、金融政策の先行き不透明感は後退しつつあり、また、為替市場では就任会見以降、対主要通貨で緩やかに円安が進んでいます。そして、④は、4月11日に日本経済新聞社と朝日新聞社が報じており、同日は、バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイ保有の商社株が上昇する場面もみられました。
なお、①の関連では、ホテル、テーマパーク、旅行代理店、百貨店、家電量販店、ドラッグストア、鉄道、航空などが、②では、自社株買いなど株主還元に積極的な銘柄や、株価純資産倍率(PBR)が低いものの業績見通しが良好な銘柄などが、それぞれ注目されやすいとみています。また、③の関連では、円安が追い風となる自動車など輸出関連銘柄が、④では、思惑的ながら、株主還元に積極的な大型バリュー(割安)株が物色されやすいと思われます。
決算では企業の今年度業績予想に加え東証の要請に応える姿勢や株主還元策も注目されよう
前述のような好材料を踏まえつつも、実際に投資判断を行うにあたっては、やはり企業決算は重要な手掛かりとなります。国内では3月期決算企業の本決算発表が来週から本格化しますが、参考までに弊社が調査対象とする主要企業408社(金融を除く)の2023年度業績見通しは、3月7日時点で売上高が前年度比-0.3%、経常利益は同+3.3%、純利益は同+1.3%となっています(図表2)。
2022年度の弊社着地予想は、順に前年度比+15.2%、同+10.8%、同+11.3%であり、前年度からは伸び率は鈍化するものの、増益傾向は続くとみています。今回の決算では、企業自身による2023年度の業績予想に加え、インバウンド需要回復の影響度合いや、東証の要請に応える企業の姿勢、自社株買いなど株主還元の有無などにも投資家の注目が集まりやすいと思われます。
(2023年4月18日)
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『足元で浮上した「日本株」の好材料と企業決算の注目点を整理する【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト