「どうするインボイス制度」10月施行なのにまだ「登録率42.3%」の実態が示す問題点と近づく「制度崩壊の足音」

「どうするインボイス制度」10月施行なのにまだ「登録率42.3%」の実態が示す問題点と近づく「制度崩壊の足音」
(※画像はイメージです/PIXTA)

東京商工リサーチは2023年4月14日、インボイス登録の状況を公表しました。それによると個人事業主の登録率が急増したものの今なお43.2%にとどまっています。インボイス制度の施行が10月に迫るなか、登録が思うように進まない実態があります。その背景には、インボイス制度に内在する諸問題があるとみられます。インボイス制度の何が問題なのか、公表されている「経過措置」にも触れながら、改めて解説します。

インボイス制度の問題点

インボイス制度は、「仕入税額控除」の計算との関係で問題となるものです。

 

インボイスは「適格請求書」という、決まった様式の請求書をさします。

 

「仕入税額控除」の計算において、仕入れのときに支払った消費税の額を証明するために、取引先からインボイスの発行を受けなければならないということです。

 

そして、インボイスを発行できるのは「課税事業者」に限られます。年間売上1,000万円の「免税事業者」は発行できないのです。

 

これによって、以下の問題点が発生します。

 

【インボイス制度の問題点】

・従来の「免税事業者」に著しい不利益をもたらす

・法秩序内部での整合性がとれない

 

以下、それぞれについて解説します。

 

◆従来の「免税事業者」に著しい不利益をもたらす

上述したように、免税事業者はインボイスを発行できません。

 

これにより、免税事業者の取引相手方はインボイスを受け取ることができず、消費税の計算をする際に「仕入税額控除」を行うことができません。

 

そうなると、免税事業者の取引相手方で「仕入税額控除」を行う事業者は、以下のいずれかを選ぶ可能性が高いのです。

 

【免税事業者の取引相手方(「仕入税額控除」を行う事業者)の考えられる選択肢】

・免税事業者との取引をやめる(課税事業者との取引に切り替える)

・免税事業者に対して「消費税相当額」の値引きを要求する

 

これは、免税事業者にとって大きな不利益です。回避したければ、免税事業者は、インボイスを発行できる「課税事業者」になるしかありません。

 

そうなると、これまでにはなかった以下の三つの負担が発生することになります。

 

【免税事業者が課税事業者に転換することによる不利益】

・消費税の納税義務を負う

・消費税の計算の手間・コストが発生する

・インボイス発行の手間・コストがかかる

 

免税事業者の多くを占めているのは、中小零細の個人事業主・フリーランスです。インボイス制度は、あたかもそれらの弱い立場の人々を狙い撃ちするかのような制度になっているということです。

 

なお、このことに関連して、インボイス制度を推進または擁護する立場から「免税事業者の益税」ということが指摘されることがあります。しかし、これは大きな誤解を含んでいます。後ほど改めて解説します。

 

◆法秩序内部での整合性がとれない

また、インボイス制度は、消費税法で定められた「免税事業者」の制度を事実上、没却するものであり、法秩序内部での整合性がとれません。

 

そもそも、免税事業者の制度の趣旨は、売上が低い零細な事業者に、消費税の納税事務にかかる労力とコストを負担させるのが適切でないということにあったはずです。

 

ところが、インボイス制度がこのまま施行されると、多くの免税事業者が、課税事業者になることを事実上強制されます。それによって、新たに上述した「消費税の納税義務」「消費税の計算の手間・コスト」「インボイス発行の手間・コスト」の三つの負担を強いられることになるのです。

 

これでは事実上、免税事業者の制度趣旨が没却されてしまいます。

 

インボイス制度にはこれらの問題点が指摘されています。

 

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