「10回に1回」は成功するはずの営業マンが10件回ってアポ「0件」…なぜ?知っておくべき〈統計学〉の考え方【数学のプロが解説】

「10回に1回」は成功するはずの営業マンが10件回ってアポ「0件」…なぜ?知っておくべき〈統計学〉の考え方【数学のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「ビジネス数学」を活用できている人はどれくらいいるのでしょうか。本連載では、株式会社数学アカデミーの代表取締役で、企業を対象にした数学リテラシー向上研修やデータ分析コンサルティング事業を行なう鈴木伸介氏の著書『仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく』から「仕事で使える数学」について、一部抜粋してお届けします。

10回目までにアポが取れる「本当の」確率とは

■成功確率を計算する

計算で検証してみましょう。

 

まず、運よく1回で成功する確率は、当然10%=0.1です。

 

次に2回目に成功する確率です。これは、1回目に失敗していて、次の2回目に成功することを考えることになります。1回目に失敗する確率は、1から成功の確率0.1を引けばよいので、「1-0.1=0.9」になります。ですので、2回目に初めて成功する確率は、「1回目失敗→2回目成功」の確率を考えればいいわけです。

 

これは、それぞれの確率を掛けることで計算でき、

 

0.9×0.1=0.09

 

になります。つまり9%です。

 

同じように、3回目に初めて成功する確率は、「失敗→失敗→成功」なので、

 

0.9×0.9×0.1=0.081

 

になります(8.1%)。

 

同じように、4回目以降10回目まで、それぞれで初めてアポが取れる確率を計算すると、[図表1]の上段のようになります。

 

[図表1]Tさんが初めてアポを取れる回数の確率

 

そしてこれらの確率をすべて足したものが、「10回目までにアポが取れる確率」ということになります。実際に計算すると、[図表1]の下段のように約65.2%になります。逆にいうと、残りの約35%は1件もアポが取れないことになります。

 

この結果、どうでしょう?

 

10回に1回は成功する人が10回続けて営業しても、1件もアポが取れない確率が35%もあるんです。この結果はちょっとショッキングではありませんか!

 

ちなみに、同じようにして20回以内にアポが取れる確率を計算すると、約88%になります。なんと10回中1回成功する人でも、20回飛び込み営業をやって1件もアポが取れない確率が12%もあるんですね。なんとも切ない話です。

 

ところで、当人がこの事実を知っているのと知らないのでは、メンタルの差は歴然です。

 

これを知らない人なら、「自分は10件に1件アポが取れるはずなのに、10件回ってもまだ1件もアポが取れない。今日は何が悪いのかな? 今日はいつになったら終われるんだろう」と余計な心配をしてしまうかもしれません。

 

ところが、この事実を知っていれば、「今日は10件回ってまだ1件もアポが取れていないけど、これはそれほど特別なことではない。だから、この後もいつもどおり頑張ろう」とモチベーションを崩さずにいつもの調子で営業を続けることができるでしょう。

 

私も飛び込み営業をやっていた頃は、メンタルの重要性をひしひしと感じていました。数学を知っていると、精神衛生上もよいですね。

 

 

鈴木 伸介

株式会社数学アカデミー 代表取締役

 

仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく

仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく

鈴木 伸介

小学館

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