「10回に1回」は成功するはずの営業マンが10件回ってアポ「0件」…なぜ?知っておくべき〈統計学〉の考え方【数学のプロが解説】

「10回に1回」は成功するはずの営業マンが10件回ってアポ「0件」…なぜ?知っておくべき〈統計学〉の考え方【数学のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「ビジネス数学」を活用できている人はどれくらいいるのでしょうか。本連載では、株式会社数学アカデミーの代表取締役で、企業を対象にした数学リテラシー向上研修やデータ分析コンサルティング事業を行なう鈴木伸介氏の著書『仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく』から「仕事で使える数学」について、一部抜粋してお届けします。

「幾何分布」を使って初めて成功するまでの確率を知る

AIやビッグデータ活用がより一般的になる中、統計学を学ぶことの重要性は年々高まってきています。その波は学校教育にも押し寄せてきており、2022年4月に高校生になった世代からは、学校での統計学の授業が実質必須化されています。

 

今後一般のビジネスでも統計学の知識が必要になってくる場面は、間違いなく増えていくでしょう。

 

■統計学を使うポイント

そもそも統計学とは、ある程度まとまった数からなる集合の傾向や特徴を分析したり、抽出した一部のデータから元の全体のデータを推測したりするための学問のことをいいます。

 

「統計学」と聞くとすごく難しいように聞こえるかもしれません。確かに、その背景には指数や積分などの複雑な数学が潜んでいます。

 

ただ、それらを知らなくても、統計学を仕事に活用することは十分に可能です。

 

統計学を仕事で使う際のポイントは次の3つです。

 

1.どのようなケースで統計学が活用できるのかを知っておくこと

2.いくつかある統計学のツールのうちどれを使うのかの判断ができること

3.統計学のツールの実際の使い方を知っておくこと

 

ここからは、実際のビジネスシーンを題材にして、どのような場面でどのような統計学のツールが使えるのか、またその具体的な使い方を紹介していきたいと思います。

 

営業職の方は、飛び込み営業をした経験はあるでしょうか?

 

私自身、会社員時代にしばらく飛び込み営業をしていた時期がありました。成功の確率は低いと頭ではわかっているものの、人間ですから立て続けに断られるのは、あまり気持ちがいいものではありません。そんな飛び込み営業にまつわる悲しいお話です。

 

営業職であるTさんは、毎日新規のアポが1件取れるまでずっと飛び込み営業をすることを日課にしています。経験上、Tさんが1回の訪問でアポを取れる確率は10%です。さて、このTさんが10件回るまでに、アポを取って無事会社に戻れる確率は何%でしょう?

 

感覚的には、「100%」と答えたいですよね。10回に1回はアポが取れるのですから、10件回れば必ずどこかで1件はアポが取れそうな気がします。

 

さて、本当にそうでしょうか?

次ページ10回目までにアポが取れる「本当の」確率とは
仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく

仕事に役立つ数学:AI時代に差がつく

鈴木 伸介

小学館

「文系」「アナログ脳」でもよくわかる! 「数学」を仕事に使わないなんてもったいない! 「医学部受験数学講師」兼「中小企業診断士」の著者がとっておきのスキルを大公開。 本書には、こんな内容↓が書かれています…

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