偏差値をわかりやすくしている2つの「味付け」とは
これですでに「すごい」度合いは計算できているのですが、ここからさらに2つの味付けをしていきます。まず、先ほどの★の式、
(「自分の点数」-「全体の平均点」)/「標準偏差」
に10を掛けます。これは単純に、動きが小さいと判別がしにくいので、はっきりわかるようにわざわざ10を掛けた、という操作になります。つまり、これで分布が広がるわけです。
次に、いま計算した、
{(「自分の点数」-「全体の平均点」)/「標準偏差」}×10
に50を加えます。
この50がなければ、自分の点数が平均点と同じ人は「0」になり、自分の点数が平均を下回ればマイナス、平均を上回ればプラスになります。
それでもよいのですが、「平均点を取った人がちょうど50になる」ほうが感覚的にわかりやすいため、便宜上50を足しているわけです。
こうすると、偏差値50ならちょうど平均点と同じ、偏差値が50を上回ると平均以上、50を下回ると平均以下、ということになります。
というわけで、これで偏差値の式が完成です。
{(「自分の点数」-「全体の平均点」)/「標準偏差」}×10+50
以上が偏差値の意味と計算の仕方です。
ちなみに、偏差値は状況によっては100を超えたり、マイナスになったりすることもあります。
偏差値の本来の意味からいうと、「今回のテストで偏差値が60だった」というのは正しいのですが、「偏差値が60の大学」という表現は、実際は適切ではないわけです(たとえば「受験生全体の中で合格確率が80%となる偏差値」という表現なら正しいです)。
ですので、たとえば模試を受ける生徒の層が変われば、試験問題も自分の点数もまったく同じであったとしても、その試験における偏差値は変わってきます。
どこか「偏差値=学力」みたいな風潮がありますが、実は偏差値というのはあってないような幻みたいなものなのです。参考程度にはいいかもしれませんが、偏差値の本来の成り立ちを考えれば、偏差値偏重主義みたいなものはやや疑わざるをえません。もちろん物差しとして手っ取り早くはあるのですが。
このように、世の中では当たり前のように使われている数字であっても、ちゃんと考えてみるとよくわからない、というのは結構あったりします。つまり、数学リテラシーが問われるわけです。
鈴木 伸介
株式会社数学アカデミー 代表取締役