(※写真はイメージです/PIXTA)

長期にわたる景気低迷やインフレで、資産運用に関心が高まっていますが、そのような状況でもまだ、多くの人々が資産を預貯金のままにしているという現実があります。虎の子の資産を目減りさせることなく、しっかり育てていくには、適切に「投資」を行うことが大切です。どのような点に気を付ければいいのでしょうか。FP資格を持つ、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

投資には「短期投資」「長期投資」があるけれど…

株式投資というのは「株を買って、売る」という行為ですが、短期投資と長期投資では単に買ってから売るまでの期間が異なるというのみならず、目的がまったく異なります。

 

短期投資は、「企業の実態が変化しないのに株価が変化するので、それを利用して儲けよう」というもので、長期投資は「企業が生み出す価値の分け前にあずかろう」というものです。

 

★「短期投資」は人々の心理を読む

企業自体が変化しなくても、人々が「あの企業の株価が上がりそうだ」と思えば皆が株の買い注文を出すので、実際に株価が上がります。しかし、今日すでに人々が企業の増益を期待していたら、今日の株価がすでに高くなっていて儲けるチャンスがありません。

 

今日は期待していないのに明日になったら人々が増益を期待するようになる、ということが株価の上がる条件なのです。しかし、それを予想して先に買っておこうというのは、非常に難しいことでしょう。人々が何を考えるのかを予想するわけですから。

 

したがって、カジノのルーレットで赤が出るか黒が出るか予想するのと同じようなことだとすれば、株の短期投資はバクチだといえるでしょう。

 

バクチが悪いなどというつもりは毛頭ありません。筆者はバクチが大好きで、株の短期投資を行なっています。カジノや競馬競輪等より株のほうが期待値は高いですし、買ってから売るまで何日も楽しめますから。

 

もちろん、小遣いの範囲内で遊んでいるだけで、大切な老後資金を運用する口座とはしっかり区別しています。カジノに持っていく財布に老後資金を一緒に入れておくのは危険ですから(笑)。

 

★長期投資は「企業の稼ぐ力」を見る

長期投資は、企業の利益の分前にあずかろうという行為ですから、企業が10年後も利益を稼いでいそうか否かを予想することになります。これも容易な作業ではありませんが、人々が何を考えるのかを予想するよりは何とかなりそうです。

 

企業は株主と銀行から資金を集め、労働者を雇い、材料を仕入れて物(財およびサービス、以下同様)を作って売ります。売値と仕入れ値の差額が企業の生み出した価値で、付加価値と呼ばれます。ここから銀行に金利を払い、労働者に賃金を払った残りが企業の利益です。

 

利益のうちで配当された分は、株主の利益になるわけですが、配当されなかった部分も内部留保として株主のものとなります。企業が解散する時には内部留保は株主が山分けするわけですが、企業の解散を待つ必要はありません。

 

内部留保が増えると株価を押し上げる要因として株主の儲けにつながりますから、これも株主が企業の生み出した価値の分前にあずかった、といえるでしょう。したがって長期投資に際しては、企業が配当をするか否かではなく企業が利益をあげ続けるか否かを予想することが必要です。

長期投資なら「割高・割安」判断するが、短期では…

株価の適正水準をPERやPBR等を用いて推しはかり、それに比べて株価が割高か割安かを判断する、という手法は広く用いられています。

 

「割安ならば買い、割高ならば売る」というのは、企業の実態の変化ではなく株価の変化を利用して儲けようという行為なので、短期投資に向いていると考える読者も多いでしょうが、そうではないので注意が必要です。

 

短期においては、人々が弱気になっていると割安でもさらに売られる場合が少なくありません。あるいは、借金で株を買っている人が不安になった銀行から返済を迫られ、泣く泣く売る場合もあるでしょう。したがって、短期投資の場合は「割安だから買う」というのは危険なことなのです。

 

一方、長期投資の場合は、基本は会社の利益の分前にあずかるわけですが、割安のときに買って気長に持っていれば割安でなくなる時が来るので、その際には割安だった分も儲けに加わるわけです。したがって、長期投資の場合は「割安の時に買う」インセンティブは大きいといえるでしょう。

株式投資の目的…儲けのためか、リスク回避のためか?

株式投資の目的としては、儲けるために買うという人が多いでしょうが、リスクをどう考えるかが問題です。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」といわれるように、儲けるためにはリスクを覚悟しなければならないからです。

 

1銘柄の株だけを大量に、安いと思った時に一気に買うというのは、大儲けを狙った行為ですが、その銘柄が暴落したり、株式市場がその後も下がり続けたりするリスクがあります。

 

一方で、多くの銘柄を少しずつ、時間をかけて買うのであれば、大儲けは狙えないでしょうが大損するリスクも小さくなるでしょう。老後資金を考える際には、大儲けしてリッチな老後を過ごそうと欲張るよりは、大損して惨めな老後を過ごすリスクを減らすことを優先すべきだと筆者は考えています。

 

リスクを避けるという意味からは、インフレのリスクを避けるために株を持つ、という観点も必要だと思います。日本人は、預金は安全で株は危険だと思っている人が多いようですが、インフレが来ると預金は目減りするので、老後資金の一部はインフレに強い株で持っておいた方がむしろ安全だ、と筆者は考えているからです。

 

本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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