中国都市部における祖父母の育児参加の現状
伝統的文化と社会競争の影響で、中国では多くの祖父母が孫の子育てに参加している。これまで主に中国農村部における祖父母の育児参加が注目されている。それに対して、都市部に関する研究が少なかった。
本章では、上海で行われた調査結果に基づいて、都市部における祖父母の育児参加の現状について述べる。さらに、祖父母の育児参加が母親に及ぼす影響についても考察する。
中国の祖父母における育児参加
人口の高齢化、女性の社会進出、保育にかかるコストの高騰などが進むにつれ、家庭の子育てにおける祖父母の役割がどこの国でも増えつつある(Dunifon&Kowaleski-Jones,2010;Masfety et al,2019)。
今や中国では半数以上の祖父母が孫育児に携わっている。中国老齢研究センターが2006年都市部と農村部の高齢者2万83人を対象として全国調査を行った結果、66.47%の祖父母が孫の面倒を見ており、2009年にはその割合が72.0%に急増した。
祖父母が孫の面倒を見る原因について、国によって違いが見られる。欧米では、主に親の死亡、親の服役、薬物/アルコール中毒、精神・身体障がい、親による虐待といったことが理由で、祖父母が孫の育児を担っているケースが多い。
中国の農村部においてもこのような保護者型の孫育児が存在している。急速な経済発展につれ、農村部では、ほとんどの若者が都会に出稼ぎに行ったため、祖父母が残された幼い子ども(いわゆる留守児童)の面倒をフルタイムでみなければならない。
すなわち、農村部の多くの家庭では、祖父母が仕事に出かけた親に代わって孫の育児をすることになった(璐斐・吴培冠、2001)。
このように、欧米諸国と農村部では、親が仕事などで家にいない等の理由から、祖父母が自分の意志を問わず、孫の養育を担わなければならない。
それに対して、多くの研究者は、中国祖父母の育児参加が伝統的文化と、社会競争の影響によるものだと考えている。そもそも祖父母が積極的に育児に参加することが多くなってきたのは、一人っ子政策が実施されたからである。