3パターンの異なる家庭環境で育った大学生たち
インタビューの協力を得た6名中国人大学生は、家庭環境の背景が異なり、親の養育のあり方がそれぞれであるところもあるが、類似している点も少なくない。
概観すると3つのパターンが見られた。
①両親とも放任型である(男性2、女性2)、②少なくても片親が厳格型である(男性1、男性3)、③平等型あるいは民主型(女性1、女性3)の3パターンであった。
また、厳しくしつける親も子どもとの関係が平等的である親も、手を出す養育のあり方が見られ、それを体験した大学生はそれに納得している(男性1、男性3、女性1)という類似点も見られた。
家庭文化の視点から見られる親の養育のあり方
社会の変化により、中国の家族構成は核家族化が進行した。
家庭には夫婦関係以外に、子どもが誕生すると親子関係が生じ、三者関係が形成される。
父親と母親それぞれの役割は子どもとの関係の中で成立するものであるが、その親たちも元々は子として自分の親とのかかわりの中で特有の文化を成長させ、それをモデルとして子どもとかかわっている。その特有の文化は、父親と母親が自分の親との間で作り上げてきた家庭文化であり、さらに新しく築かれた家庭の中で新たな家庭文化が作り上げられていく。
このように各家庭の文化によって親の養育のあり方も違ってくるものと考えられる。
両親とも放任型について
中国においては、伝統的な考え方は“男主外、女主内”(夫は外で働き、妻は家庭を守る)であり、家庭内では父親と母親との役割分担がはっきりと決められている。
しかし、共働きする夫婦が増え、昔のように父親が外で働き、母親が家で子育てをする構成が変化してきた。
1990年代の改革開放以来、女性が社会に出て仕事に就き、自分の才能を発揮するという新たな役割として機能している。
本来子育てに専念する母親も、外で働くことになり、自分で子育てする余裕をなくし、子どもとかかわる時間やエネルギーが減り、子どもに放任的養育をするようになる可能性がある。
放任的養育を受けてきたと認識していた2名の大学生(男性2、女性2)は、両方とも親が仕事をしている家庭背景があり、父親が外で働き、母親が家庭を守るという従来の家庭文化が変化し、両親が子どもとかかわる余裕をなくし、放任的養育のあり方が形成されたのかもしれない。
男性2、女性2は両親が仕事のため、「親が干渉しないしかかわってこなかった」、「生活面に関してはあまりしつけをしなかった」ということで、上述したように両親が子どもとかかわる余裕がなくなったため、養育のあり方が放任的になったのであろう。
一方、男性2の父親が不倫したため夫婦関係が悪化となった時期があった。