(※画像はイメージです/PIXTA)

NHKの受信料不払いに対し、2023年4月以降、NHKが2倍の「割増金」を請求できるようになります。しかし、そもそも、意思に反して受信料の支払を強制する現行制度はなぜ認められているのでしょうか。また、多チャンネル化、IT化が高度に進んでいる現在、NHKの存在意義をどのように考えるべきでしょうか。問題点・論点を整理して解説します。

受信料制度の「法的根拠」は?

そもそも受信料の強制徴収の制度はなぜ認められているのでしょうか。最高裁判例にも触れながら解説します。

 

最高裁は、受信料の強制徴収の制度は合憲であると判示しています(最判平成29年(2017年)12月6日)。

 

その判旨の概要をまとめると、おおむね以下の通りです。

 

・放送は国民の知る権利(憲法21条)を充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。

 

・放送の不偏不党、真実及び自律を保障することにより、放送による表現の自由を確保する必要がある。

 

・そのために、「公共放送」と「民放」が互いに啓蒙しあい、欠点を補いあうことができるように、「二本立て」の体制がとられている。

 

・NHKは「公共放送」であり、国家権力や、広告主等のスポンサーの意向に左右されず、民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体として性格づけられている。

 

・したがって、放送法は、NHKが営利目的として業務を行うことや、スポンサー広告の放送をすることを禁じており(放送法20条4項、83条1項)、その代わりに、財源確保の手段として、受信料の制度が設けられている。

 

・受信料の金額については毎事業年度の国会の承認を受けなければならず、受信契約の条項についても総務大臣の認可・電波監理審議会への諮問を経なければならないなど、内容の適正性・公平性が担保されているので、そのような受信契約を強制することは目的のため必要かつ合理的である。

 

この判旨は2つに大きく分けることができます。「目的の正当性」と、目的達成のための「手段の必要性・合理性」です。

 

◆目的の正当性

NHK受信料の強制徴収の制度の正当化根拠は、NHKの公共放送局としての「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」を実現するため必要だということにあります。

 

スポンサーや特定の社会的権力の意向に左右されず、「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」を確保するためには、コマーシャル収入ではなく、国民からの受信料を財源とする制度が必要だということです。

 

◆手段の必要性・合理性

受信料制度の正当性が認められるとして、次に問題となるのは、強制徴収の制度が、目的達成のため必要かつ合理的といえるかということです。

 

この点について、最高裁判所は、もっぱら手続面に着目して判断しています。

 

すなわち、強制徴収制度を定めた「放送受信規約」は「国会の承認」、「総務大臣の認可」といった民主的な手続きを踏んでおり、内容の適正性・公平性が制度的に担保されているので、目的達成のために必要性・合理性が認められるとしているのです。

 

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