◆最高裁が「内容」に踏み込んでいないワケ
最高裁はもっぱら手続面に着目して判断を下しており、放送受信規約自体の内容に踏み込んでいません。その理由は、国会(立法府)・政府(行政府)の裁量を尊重するという考え方にあります。
どういうことかというと、国の統治機構は立法(国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)の「三権」からなります。このうち、国会は、国民により選挙された「全国民の代表」である国会議員で組織されています。また、内閣は「議院内閣制」の下、国会議員から選出された内閣総理大臣が率いています。
したがって、国会と内閣には国民によるなんらかの「民主的コントロール」が及んでいるという「建前」があるのです。
これに対し、裁判所は「立法・行政・司法」の「三権」のなかで唯一、「民主的なコントロール」が及んでいません(最高裁判事については国民審査の制度がありますが、選挙ではなく「リコール」の制度です)。
裁判所を「民主的なコントロール」の埒外におき「法の解釈・適用」に専念させることで、「法の支配」を実現しようということです。
したがって、裁判所は基本的に国会の「立法裁量」や政府の「行政裁量」を基本的に尊重して、その内容の「当・不当」の問題には基本的に踏み込まないことにしているのです。
NHKに求められるもの
前述のように、判例の論理を根本で支えている前提は、NHKという公共放送局の公共性、非営利性、独立性、公正性です。
これらが、いずれも国民の知る権利(表現の自由と表裏一体・不可欠なものとされる)に奉仕するものだからこそです。
もし、公共性、非営利性、独立性、公正性の前提が崩れてしまえば、強制徴収制度の憲法上の正当化根拠はたちまち失われます。
たとえば、NHKが時の政権や特定の政党の意思を代弁したり、忖度したりするようなことがあってはなりません。また、過度に視聴率を追い求める番組作りや商業主義に走ることも、受信料制度の正当化根拠を失わせることになります。
残された重要な問題とは
受信料制度の法的根拠・判例については上述した通りですが、そもそものNHKの存在意義自体に関する問題が指摘されています。
1950年の放送法制定から70年あまりが経過し、今日では多チャンネル化・IT化が著しい上、テレビ自体の役割・影響力が相対的に低下しているといわざるをえません。そのなかで、NHKだけをことさら受信料制度によって支えるのは過度の優遇ではないかという指摘もあります。
これに対し、多チャンネル化・IT化が高度に進んだ今だからこそ、誤った情報が瞬時に多くの人に無批判に広まる危険性があり、「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」が高度に保障されたNHKのような公共放送の存在意義がより高まっているという考え方もあります。
いずれの考え方に立つにせよ、放送法制定当時と比べてテレビ放送を取り巻く環境が大きく変わっていることは明らかです。NHKおよび受信料制度のあり方について、今後どうするのか、再検討をすべきタイミングにさしかかっているといえます。
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