「会席や甘味処で抹茶が出たとき、茶道の作法は気にするべき?」“ついやってしまいがち”なマナー違反【フードプロデューサーが徹底解説】

「会席や甘味処で抹茶が出たとき、茶道の作法は気にするべき?」“ついやってしまいがち”なマナー違反【フードプロデューサーが徹底解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

食の知識はグローバル社会の必須教養であり、他国の食文化への敬意がビジネスエリートの武器となります。約4万人の人生を変えてきた人気テーブルマナー研究家・小倉朋子氏の著書『世界のビジネスエリートが身につけている教養としてのテーブルマナー』より、「世界のエリート層の食べ方とふるまいからにじみ出る教養」について解説していきます。

「会席」は無礼講にならない宴会料理

和食にも「コース料理」があります。大きく「会席」と「懐石」の2種類があり、同じ和食で同じ音でも、根底にある心根が違います。

 

会席は宴会料理のこと。お酒を楽しみながら、①先付け→②吸い物→③お造り→④煮物→⑤焼き物→⑥揚げ物→⑦蒸し物→⑧酢の物→⑨お食事(ごはん・香の物(漬物)・止め椀(味噌汁))→⑩水菓子(旬の果物)の順に出されます。

 

「食い切り料理」とも呼ばれる会席は、一品ずつ運ばれてくるスタイルです。いつまでも食べ終えずに、膳の上に料理が溜まってしまうのはマナー違反です。

 

例外的に先付けは、お酒と一緒に楽しむために残しておいてもかまいませんが、それ以外は、一品運ばれてくるごとに速やかにおいしくいただきます。先付けを含めて、お膳の上にあるのは「最大2品」と心得ておきましょう。

 

ちなみに、会席のデザートや、甘味処のような場で抹茶をいただくときは、特に茶道の作法を気にしなくて大丈夫。「食後のコーヒー」と同様の感覚で問題ありません。

もてなしのなかに「季節」を感じ取りたい「懐石」

懐石とは茶の湯での料理を指します。お茶席に訪れた客人が空腹のままでは、濃茶で胃が荒れてしまいます。そこで軽いおしのぎとして料理を出すようになったことが、懐石の始まりとされています。

 

あくまでも懐石のメインは濃茶をいただくことなので、会席ほどしっかりした料理ではありませんし、華美なところもありません。

 

しかし亭主みずから茶室を整え、料理に腕をふるい、濃茶を点て……と、徹頭徹尾、心を尽くして客人を迎える懐石こそ和食のもてなしの真髄といっていいでしょう。

 

とはいえ、茶道を習ったこともないのに、懐石に招かれてしまったとしたら、不安になるのも無理はありません。

 

もちろん細かい作法はありますが、正客(筆頭のお客。すべてのもてなしを最初に受けるので、作法に精通していなくてはいけない)でなければ、基本を押さえておくだけで大丈夫です。

 

型としてのマナーの基本は次にまとめますが、それ以前に意識していただきたいのは、もてなしのなかに「季節」を感じ取るということです。

 

亭主は、茶道だけでなく、書道、華道、料理、陶器などにも精通した、もてなしのエキスパートです。そして心を尽くして、その場を整えています。

 

お客のほうは、掛け軸、生花、茶碗などを拝見する、愛でるというのが基本マナーなのですが、それは「あなたのおもてなしの心、ちゃんと受け止めました」という、いわば返礼です。

 

そうはいっても、「愛でるポイント」がわからなくては、ただ見ているだけになってしまいますよね。

 

もちろん、ほかのお客の様子を窺いながら、「眺める」という形をなぞることはできますが、わけがわからないままでは、何より自分自身が緊張するばかりで、ちっとも楽しめません。

次ページ「懐石」特有、「茶の湯」特有のマナーも、上手く乗り切るコツがある
世界のビジネスエリートが身につけている教養としてのテーブルマナー

世界のビジネスエリートが身につけている教養としてのテーブルマナー

小倉 朋子

SBクリエイティブ

約4万人の人生を変えてきた人気テーブルマナー研究家が「世界のビジネスエリートの食べ方とふるまい」を通して、「マナーからにじみ出る教養」について説く本。各国の大使や国内外の要人らとの多くの会食から、著者が得た知見…

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