(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルを避けるために有効な「遺言書」ですが、遺言書には一定の「決まり」が存在し、不備があると遺言として認められないという注意点があります。実際に、遺言書が正しく作成・保管されていなかったことによるトラブルは後を絶ちません。そこで今回、元税務調査官で相続専門40年のベテラン税理士秋山清成氏が、遺言書作成に関する注意点と正しい手順、さらに信託銀行が取り扱う「遺言信託」を勧めないワケを解説します。

トラブルを防ぐ「自筆証書遺言書保管制度」のメリット

2020(令和2)年7月、「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。これは、法務局における遺言書の保管等に関する法律によって創設された制度で、遺言者本人が法務局に出向いて自筆証書遺言を預けると、法務局は遺言書を画像データ化して保管することになりました。

 

遺言書の保管を法務局に申請する際、窓口にて遺言の形式ルールが守られているか、チェックを受けることができるのは大きなメリットです(内容面の詳しいチェックではない)。

 

また、遺言を法務局に保管してもらうことで、遺言の紛失や改ざんを防ぐことができます。

 

さらに、法務局が遺言者の死亡を確認すると、遺言書が法務局で保管されていることを申請時に指定した相続人らに通知します。その通知により、遺言書の存在が明らかになるので、遺言書が相続人に発見してもらえないということがなくなりました。

 

また、自筆証書遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きを受ける必要がありません。つまり、制度を利用すれば、自筆証書遺言のデメリットをおおむね解決できるわけです。

 

注意点として、遺言者本人が法務局に出向く必要がある、顔写真付きの身分証明書が必要、内容を変更する手続きが面倒、などが挙げられます。

 

なお、自筆証書遺言の保管申請手数料は3,900円です。

「公正証書遺言」の概要

「公正証書遺言」とは、法律のプロである公証人が遺言を作成することで、その内容の権利・義務・事実などを証明する書類のことをいいます。

 

遺言者が考えた遺言内容の原案(メモでもOK)を持って公証役場を訪問するか、病気で訪問が難しい場合は公証人に自宅に来てもらい、口頭で内容を伝える形で遺言を作成します。

 

後日、遺言者、公証人、証人2名が、作成をした遺言書に署名・捺印をするという流れです。

 

つまり、自筆証書遺言とは異なり、遺言者本人が遺言書を手書きで作成する必要はなく、遺言者本人が文字を書けない状態でも作成が可能です。

 

公正証書遺言なら形式不備による遺言無効のリスクはありません。また、遺言書の紛失・改ざんのリスクもありません。手数料は概ね2万~5万円です。

 

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※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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