グループ経営の構築に必要な5つのポイント
グループ経営システムにおけるテーマは、以下の5つに集約できる。各テーマにおけるポイントについて以下の通りである。
(1)グループ理念の策定
1つ目のテーマは、「グループ理念の確立」である。当然、多事業であることから各事業会社の事業理念等はすでに存在している場合が多いが、グループとしてのミッション、ビジョン、バリュー(価値観)を明確にする必要がある。また、そのグループアイデンティティを策定するだけではなく、社内外にどのように発信、浸透させるかも決めることが大切である。
(2)グループ経営企画機能の確立
2つ目のテーマは、グループ企業価値(シナジーとポートフォリオ)の最大化を実現する戦略、方針、計画を立案する「グループ経営企画機能」の設計である。具体的には、グループビジョンマネジメント、事業ポートフォリオ(資源配分)の決定、グループ事業計画(予算)の策定、グループブランディングをどのように実施、運用していくかのルール・仕組みを構築することである。
(3)グループガバナンス機能の確立
3つ目のテーマは、グループとしてのルール、意思決定プロセス、権限と責任を明確化する「グループガバナンス機能」の設計である。具体的には、ホールディングカンパニーと事業会社のどちらにどこまでの責任と権限を持たせるか、その意思決定プロセスをどうするか会議体も含めて設計する。それ以外にもコンプライアンス・リスク管理や事業会社の監査制度なども含めたグループ諸規程の整備が必要である。
(4)グループマネジメント機能の確立
4つ目は、グループ全体を管理・評価するマネジメントシステムで、特に事業会社の業績向上を実現する「グループマネジメント機能」の設計である。具体的には、グループ管理会計システム、グループ業績マネジメント、グループ人材マネジメント、グループCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の設計になる。仕組み自体の構築になるが、この部分はどこまでシステム化するかも見据えた設計が不可欠である。
(5)シェアードサービス機能の確立
5つ目は、共通オペレーションの集中処理を実現する「シェアードサービス機能」の設計である。グループ全体におけるオペレーション業務の集中化と効率化が目的だが、当然事業会社で実施したほうが良い業務もあり、一概にすべてを集中化するものではない。どこまでの業務をホールディングカンパニーで実施するかを判断する必要がある。一般的には財務会計、財務、債権回収管理、労務管理、給料関係、ITインフラ等を集中化することが多い。
グループ経営を定着させる留意点
このように、5つのテーマについて設計した後、重要なのは運用・定着化である。設計した各機能を実際に運用し、見直し、改善していくフェーズである。設計段階で想定していた状況の変化や外部環境の変化に対応する必要があり、実際に導入した後に想定外のことが発生する可能性もあるため、運用と並行して見直しをかける。
また、見直しだけではなくグループ理念については、社内浸透を図るためのインナーブランディングの実施や、シェアードサービス機能の運用においては、業務移管のスケジュール化とその推進なども実施していく。
この取り組みにおいて、特に大切なことは、グループ経営実現に向けて5つのテーマを全体の整合性をとりながら、スケジュールに沿って確実に推進していくことである。その意味では、部門横断での推進体制確保が不可欠であり、全社での取り組みと協力が必要になる。
福元 章士
株式会社タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
上席執行役員
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