グループ経営における課題とは?
事業承継を迎える企業増加の影響もあり、M&Aや分社化などを戦略的に進める企業が増加している。このようにグループ化された企業経営をどのように進めるかが大きな経営課題となっている。グループ経営における課題は、大きく5つに分類される。
(1)グループとしての経営方針や戦略が不在のままグループ経営されている。
(2)その時々の判断で分社化やM&Aを進めた結果、子会社数が増加していく一方で、その子会社を管理するレベルが追い付いていない。
(3)中核事業会社の権限・影響力が大きく、各事業会社の「部分最適」が優先されすぎる状況にある。
(4)すでにホールディングス体制に移行している場合、グループ本社(ホールディングカンパニー)がグループ全体の司令塔として各事業会社に対して「横串」を通し、経営資源の最適配分や事業評価、実効的な経営管理のプラットフォームを構築する機能が発揮されていない。つまり、ホールディングカンパニーの機能が十分に発揮されていない状況にある。
(5)事業会社の自律分権を掲げているが、実際には結果管理すらせず放任状態に陥っている状態である。
グループ経営が上手く機能していないケースでは、このうち少なくとも2つ以上の症状が出ていることが多い。まずは、読者の企業グループにこのような症状が出ていないか確認していただきたい。これらの課題に対して、あるべきグループ経営とはどのようなものかを述べていく。
目指すべきグループ経営の姿
目指すべきグループ経営とは、以下の5つがしっかりと確立している経営体制のことだといえる。
(1)グループ経営として共通した価値判断基準
(2)各事業会社よりグループ全体の最適化を優先する
(シナジー・事業ポートフォリオによる全体最適化)
(3)グループ本社による、グループ全体におけるガバナンス構造
(4)グループ本社によるグループ全体のマネジメントシステム
(5)グループのオペレーションコストを最小化する仕組み
では、ホールディング経営を正しく機能させるために、「あるべきグループ経営」を実現する経営体制をどのように構築するのかについて述べていく。